大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第61号− 2008年9月30日発行


米のカビ

 今月、非食用事故米の不正流通に関する事件が大きく報道されました。不正転売された輸入米には、殺虫剤のメタミドホス、アセタミプリドに加え、カビ毒のアフラトキシンに汚染されていたものも含まれていました。また、カビが生えた「カビ米」もこれらと同様に一括して「事故米」と説明されました。「カビ米」と「カビ毒アフラトキシン」に注目して、今月は米のカビをテーマにします。

 米はカビの発育にたいへん適した基質であるため、水田の栽培中から始まって、収穫、乾燥、貯蔵、流通、そして、家庭内での保存に至るまで、様々なカビの付着や汚染を受けます。一般に収穫直後の米は水分含量が高いため、好湿性1)の圃場性カビ2)であるアルタナリア、クラドスポリウム、フザリウムなどがよく検出されます。これらのカビは土壌由来であり収穫前後に汚染されるため、汚染そのものを防ぐことは困難です。しかし、乾燥後、米の水分含量が低下すると、そのようなカビは死滅し、アスペルギルスやペニシリウムといった中湿性3)の貯蔵性カビが主流を占めるようになります。そして、保存期間が長くなりさらに水分含量が低下すると、好乾性4)の貯蔵カビであるユーロチウムやアスペルギルス・レストリクタスなどが多く検出されるようになります。このように、米に発生するカビは周辺環境の変化に伴い、種類も変遷していきます。そして、いずれの過程でも目視でカビ汚染が見られた場合に「カビ米」といいます。

 それでは米に生えたカビはすべてマイコトキシン(カビ毒)を産生するのでしょうか?もちろんそんなことはありません。一部のカビだけがマイコトキシンを産生するのです。

 最近の国内産玄米100検体のカビ調査ではマイコトキシンを産生する可能性のあるカビとしては、ペニシリウム・イスランディカム(1%)、アスペルギルス・ベルジカラー(18%)、アスペルギルス・オクラセウス(3%)、アスペルギルス・フラバス(5%)などの中湿性の貯蔵カビが検出されました5)。しかし、これらのカビの存在を環境中からなくしてしまうことは現実的には困難なため、たとえこれらのカビが米に付着してもできるだけ汚染しないよう、つまりマイコトキシンを産生しないよう管理することが大切となってきます。

 そのためには収穫後のすみやかな乾燥と貯蔵中の温度・湿度の管理が極めて重要であり、現在では火力乾燥と低温貯蔵倉庫(13〜15℃、あるいは5℃、湿度73〜75%)の使用が主体となって、カビ発生の防止に努めています。

 今回、輸入事故米に含まれていた「カビ毒アフラトキシン」は、主に亜熱帯地方に生息しているアスペルギルス・フラバス及び近縁カビにより産生されます。日本にもアスペルギルス・フラバスは常在し、実際上記のように米からも検出されましたが、これらはすべてアフラトキシン非産生株でした。現在まで国内産米からアフラトキシンが検出されたことはありません。

 このように、現在のところ国内産米に関してはアフラトキシン汚染の心配は不要ですが、諸外国との物流の多さや地球温暖化の影響を考えると、国内でアフラトキシン産生株が増えたとしてもおかしくない状況とも言えます。輸入米は当然ですが、国内産米に関しても、引き続き十分な監視を続けていく必要があるでしょう。

1)水分が多いところを好んで生えるカビ
2)田畑の土壌に生息し、収穫前後の作物を汚染するカビ
3)水分がやや少ないところでも生えることができるカビ
4)乾燥したところを好んで生えるカビ
5)酒井綾子他:食品衛生学会誌 46巻, 205-212, 2005.

*個々の汚染物質については、下記の食品安全委員会のホームページを参照してください。
   食品安全委員会ホームページ
     メタミドホスについて
     アセタミプリドについて
     アフラトキシンB1について

(企画調整課 久米田裕子)


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