大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第61号− 2008年9月30日発行


加工食品中の残留農薬分析

 中華人民共和国の一つの食品工場で生産された二種類の市販冷凍餃子によって、2007年末から2008年1月にかけて三件の中毒事件が発生しました。その後これらの事件は、餃子に高濃度に含まれていた、有機リン系殺虫剤のメタミドホスが原因であったと判明しました。一般的に農業用殺虫剤は高濃度の液体や粉末(製剤)で販売され、水で500?1000倍に希釈して農産物に噴霧する、という方法で使用されます。今回の事件の場合、中毒を起こした餃子から最高で約3万ppm(ppmは百万分の一)のメタミドホスが検出されていましたが、これは餃子重量の約3%に相当し、餃子の原材料である農産物に対して使用された農薬の残留ではあり得ないほど高濃度でした。逆にこの濃度にするためには、殺虫剤の製剤を餃子に混ぜる必要があります。以上のことから、この事件は食品工場で行われた犯罪であると推察されています。

 一方で、この事件は輸入加工食品に対する国民の不安を増大させました。さらに加工食品に対して食中毒防止のための細菌検査は行われているが、残留農薬分析は行われていないという事実を取り上げて、加工食品の安全性を不安視する報道も見られました。これまで加工食品に対して残留農薬分析が行われていないのは、原材料となる生鮮食品が食品衛生法で規制されており、それを用いて製造された加工食品には問題が無いと考えられるためです。しかし、今回の事件を契機に加工食品に対する農薬分析が求められるようになりました。なお、餃子のような高度に加工された食品には農薬の残留基準は設定されておらず、仮に農薬が検出された場合は、原材料の基準値と含有率から食品衛生法への適否を判断することになります。

 分析技術的には、様々な食材の混合物であること、油を含んでいること等が問題になると考えられました。当所では、これまで生鮮食品を対象とした迅速一斉分析法を開発してきました。そこで、今回この手法を応用して、加工食品を対象とした一斉分析法を構築しました。検出器には質量分析装置を用い、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフによって各成分を分離同定しました。餃子、レトルトカレー、白身魚フライ、鳥の唐揚げ、ポテトフライ等、様々な冷凍食品を対象に添加回収試験を行い、200種類以上の農薬で良好な回収率が得られました。この分析法を用いて市販の冷凍食品(75検体)のモニタリング調査を行った結果、ポテト製品1検体からジャガイモの発芽防止に用いられる農薬が検出されましたが、検出値はジャガイモの基準値の千分の一以下でした。また、その他の74検体から農薬は検出されず、今回のモニタリング調査では食品衛生法に違反する事例はありませんでした。

(食品化学課 起橋雅浩)


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