大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第62号− 2008年10月31日発行


菓子類から検出されたメラミン

 今年9月に中国でメラミンが混入した粉ミルクを飲んだ乳幼児に腎結石などが発生していたことが報道されました。患者数は数万人規模と言われ、死者も出て大きな問題になりました。メラミンは工業用の成分で食品の製造で使用される物質ではありません。粉ミルクにメラミンが入っていたのは、原料である牛乳のタンパク質含有を偽装するために加えられたのが原因と考えられました。つまり、タンパク質含量は食品中の窒素量で測定するため、メラミンを混入させると窒素量が多くなり、牛乳を薄めても栄養価を高く見せかけることができたからです。

 メラミン中毒については2007年にアメリカやカナダで、中国産の原料を使ったペットフードを食べた犬や猫が結石などによる腎不全で数千頭死亡し、大問題となりました。この時も原料の栄養成分を見かけ上良く見せるために、メラミンが加えられていました。

 粉ミルクへのメラミンの混入は、最初は中国国内の問題と思われていました。その後牛乳のメラミン汚染も判明し、中国で菓子類を製造している日本の食品会社が現地調査をしたところ、一部日本へ輸入している菓子類の材料にメラミンが混入した可能性が出てきました。食品会社はすぐに疑わしい食品の自主回収を始めました。

 当所では食品回収が公表されてすぐにメラミン検査法を検討しました。日常の検査ではメラミンを検査しておらず、昨年アメリカで使用された方法を基にして、正確に検査できるように改良しました。日本ではほとんどの検査機関がメラミン検査の経験が無く困っていましたので、厚生労働省は当所の改良法をメラミン検査法として全国の検査機関に提示しました。

 大阪府では福祉施設に残っていた疑わしい菓子やメーカーが回収した菓子などの提供を受け、当所で検査した結果4種類6検体の食品から0.8〜37mg/kg(食品1kg中に0.8〜37mg含まれる)のメラミンを検出しました。大阪府は専門家委員会を開き食品中に検出されたメラミンの安全性について検討しました。その結果、メラミンが混入した菓子類を普通量食べても健康被害が発生しないと思われる濃度であり、すでにメラミン入りの菓子類を食べた人の健康調査も必要ないと判断されました。政府機関である食品安全委員会が行った計算でも、一番濃度が高い37mg/kgの菓子を大人で17個、子供では7個食べても健康に悪影響が出ないと判断されました。

 その後全国的に検査が始まり、他にも中国で製造され、日本国内で流通している食品にメラミンが混入していたことがわかってきました。これまでのところ最高で54mg/kgの濃度でした。調理済みたこ焼きからも少量のメラミンが検出された例がありましたが、これはたこ焼きの原料に粉乳が使用されており、この粉乳が原因でないかと考えられています。

 今回の事例には三つの問題があります。

 一つは昨年に栄養成分を偽装するために加えられたメラミンにより、北米でペットが大量に死亡する事件があり、メラミンを食べ物に加えると健康被害を引き起こすことがわかっていました。アメリカでは大きな社会的問題となり、ペットフードの回収などを通じて発生源である中国の人達もよく理解していたはずです。それにもかかわらず、人の食べ物にメラミンを添加することを中止しませんでした。食の安全を無視した行動であり、日本の食品製造業界では考えられないことです。

 もう一つは、健康被害を受けた乳幼児やペットにとっては、メラミンが混入した粉ミルクやペットフードが重要な栄養源であり、日常的に食べなくてはならなかったことです。食品中の化学物質が原因となる健康被害の場合、食品中の濃度と食べた量(頻度も含めて)が重要なポイントです。赤ちゃんのように粉ミルクしか飲まない場合は、粉ミルクに有害成分が含まれていると毎日その悪影響を受けることになってしまいます。

 さらにもうひとつは、中国製の食品は多くの国に輸出されているということです。今回の事例でも、多くの国で中国製の加工食品からメラミンが検出され、中国国内問題と思われた事例があっという間に世界中に広がりました。厚生労働省は、中国から輸入される乳、乳製品、乳製品を原材料とするすべての加工食品について、輸入時にメラミン検査を実施するよう通知を出しました。食品の輸入率が高い日本は、今後もこのような輸入食品による突発的な健康被害事件が国内問題になる可能性があります。

 幸いこれまでのところ、日本では食品に混入したメラミンが原因と思われる健康被害例は起こっていませんが、すべての国で日本と同じ基準で食品が製造されていないことを実感した事件でした。

(食品化学課 尾花 裕孝)


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