大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第63号− 2008年11月28日発行


水道水のクリプトスポリジウム等対策に紫外線処理が適用可能に

 平成8年6月に、わが国で初めて水道水に起因するクリプトスポリジウムによる集団感染が埼玉県越生町で発生し、大きなニュースとなりました。大阪府でも健康被害はなかったものの平成18年5月に簡易水道浄水場の水道水から検出され、給水停止にいたる出来事がありました。クリプトスポリジウムは耐塩素性病原生物で、浄水場で行われる通常の塩素処理では死滅しません。そのため、平成12年に制定された水道法第5条に基づく「水道施設の技術的基準を定める省令」において、原水に耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合には、ろ過等の設備を設置すべきことが規定され、濁度を0.1度以下に維持することで水道水への混入防止を図ってきました。厚生労働省の報告(平成19年3月末時点)によると、水道原水のクリプトスポリジウムによる汚染のおそれがある施設は全国で6,872施設で、このうち3,605施設では既にろ過施設設置等の予防対策が実施済みであるが、残る3,267施設については検討中であるとしています。しかし、ろ過等の設備は建設コストがかかるうえ、日常の維持管理も重要なことから、簡易水道事業などの小規模な水道施設での対策の進捗状況は十分とは言えない状況でした。

 このようななか、厚生労働省は先の「水道施設の技術的基準を定める省令」の一部改正を行い、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物対策として「紫外線処理」を位置づけ、平成19年4月1日から施行されました。

 これまでクリプトスポリジウムに対する紫外線の不活化力を、脱嚢法(オーシストという殻をもった状態からスポロゾイドという4個の細長い虫体が脱嚢する能力)で評価した場合には多量の照射量が必要で、実用的ではないとされてきました。しかし、その後の研究で動物(マウス)感染法によって評価した場合、10mJ/cm2の照射量で99.9%のクリプトスポリジウムが「生きてはいるが感染性は消失している状態」にできることが明らかとなりました。

 今回の改正では、処理対象とする水が地表水を直に取水していないこと、濁度が2度以下、色度が5度以下であること、及び254nm付近の紫外線透過率(光路幅10mm)が75%を超える場合には、ろ過等の設備に比べ簡便で安価な紫外線処理設備の導入が可能となりました。その際、紫外線の照射量は、紫外線照射槽を通過する水量の95%以上に対して、10mJ/cm2以上確保できることと規定されました。

 メーカー各社は紫外線照射装置がこの条件を満足しているか実証試験をする必要があり、そのための審査基準が平成20年1月に制定されました。この基準に合格した紫外線照射装置が9月以降順次認定されており、これによって小規模な水道事業におけるクリプトスポリジウム対策が進展することが期待され、より安全で安心な水道水が給水されることとなるでしょう。

(環境水質課 中野 仁)


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