大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第65号− 2009年1月30日発行


近畿の地方衛生研究所が合同で健康危機事象模擬訓練

 先月12月16日に近畿圏の当所を含む地方衛生研究所が合同して健康危機事象の模擬訓練を行いました。化学物質と微生物による2つの健康被害が発生したと想定して、被害者の嘔吐物と尿あるいは分離した細菌を各地方衛生研究所に送り、その原因物質が何か、どれだけの量かを測定するものです。

 近畿2府7県(福井県、三重県、徳島県を含む)には、当所のような機能を持った地方衛生研究所が17あります。この地方衛生研究所を持つ知事や市長間で、健康危機が発生したときには互いに協力し合おうと、平成18年に連携協定を結んでいます。これまで、連携して健康危機にあたるためのマニュアルや、各地方衛生研究所の実情に合った健康危機対応体制作りをしてきました。平成19年は、その体制作りのために実際に模擬訓練を行い、出来た体制を検証しました。その模擬訓練の経験が、昨年の輸入餃子農薬混入事件や輸入菓子にメラミンが混入していた事件に素早く対応するために大変役立ちました。そこで、これから年に1回近畿圏合同の模擬訓練をしていこうと地方衛生研究所近畿支部の会議で決め、今回はその第一回でした。京都府保健環境研究所が担当して秘密裏にシナリオと模擬検体を用意しました。

 シナリオ1:朝9時30分にメールで第一報が入り、「12月15日夜に、病院から保健所へ中毒患者が発生した模様との連絡が入った。保健所が聞き取りに保育所の関係者の元に行った。本日、市内の保育所で,父兄参加行事が開催された。開催終了後あたりから、父兄と幼児たちが、腹痛、嘔気を訴え、中には嘔吐をしたものや下痢を発症したものもおり、そのうち数名が、重体で入院している模様である。保健所職員が、調査及び吐物等の検体採取に向かった。」「順次患者の症状など情報を連絡するが、採取できた患者の嘔吐物と尿を送るので検査すること。」とのことだった。

 シナリオ2:朝9時30分にメールで第一報が入り、「二つの保健所管内で同じような症状の事例が発生。保健所の調査で両事例の患者は各々の保健所管内のレストランチェーン店で共通のメニューを喫食していることが判明した。それぞれ約30名の患者がおり、一つの保健所管内では一名の女性が死亡した。」「原因菌と考えられるものを医療機関や保健所が便から分離したので、研究所で何か調べて欲しい。」とのことだった。

 9時35分に所内放送で健康危機対策会議を開くことを連絡し、所長以下部長、課長、各課員(2-3名)を招集しました。9時41分に会議を開催してメールの内容を説明後、シナリオ1、2に対応して2つの班に分かれました。

 10時にそれぞれの検体と患者さんの調査票が到着しましたので、各班で症状から予想される原因物質(菌)と検査の方針を討論し、方針に従って送られた検体をそれぞれの実験室に持ち帰りました。各班の情報担当者と所外に対する情報担当者を決め、保健所からの調査報告(実は京都府保健環境研究所から)と所内の検査の進行状況を所内イントラネット上の電子掲示板で共有できるようにしました。

 16時30分に、全てのデータが出揃いましたので再度対策会議を招集し、結果の判定を行いました。この間、【シナリオ1】については化学物質が疑われ、患者の症状からある金属化合物の可能性が考えられましたので72元素を一斉分析し3つの元素が含まれていることが解りましたが、この内の1つは予想通り、2つはこの程度の濃度では有害ではないことが知られています。念のために農薬の存在もスクリーニングしましたが、含まれていませんでした。【シナリオ2】では検体は分離菌の加熱殺菌液とのことでしたので、予想される病原遺伝子を検出するDNA検査(LAMP法、PCR法)を行いました。合わせてよく起こる食中毒菌のDNA検査も行いましたが、こちらは検出できませんでした。

 会議での検討結果と、送られてきた検体の測定結果(物質名と濃度)をまとめて、保健所と大阪府担当課(実は京都府保健環境研究所)に検査結果を送り模擬訓練を終了しました。後日京都府保健環境研究所へ模擬訓練に関する反省などを回答するアンケートを送りました。

 ちなみに、【シナリオ1】は月見団子を作る際に上新粉と間違って別なものを使った事故でした。【シナリオ2】は腸管出血性大腸菌O157による食中毒でした。

(企画調整課 赤阪 進)


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