大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第67号− 2009年3月31日発行


鳥インフルエンザウイルス迅速診断法の開発

 東南アジアを中心に発生している鳥インフルエンザのウイルスが変異し、ヒトからヒトに感染する新型インフルエンザの発生が危惧されている状況です。新型インフルエンザの流行を発生初期の時点で封じ込めるためには、感染の疑いがある患者を臨床現場で迅速に診断し、患者を隔離することがもっとも重要です。しかし、通常、鳥インフルエンザウイルスの診断を確定するには、PCR法などによる遺伝子診断が必要で、最低6〜8時間を要します。そこで、私たちは平成18年から、特殊な技術や設備を使用しないで、簡易かつ迅速に鳥インフルエンザウイルスを検出するためのイムノクロマトを試作し、迅速診断法の開発に着手しました。平成19年1月には10分で診断可能な迅速診断法(診断キット)を開発し、特許を申請しました。この診断法の特徴は、H5亜型を含む全ての亜型(H3〜H15)の鳥インフルエンザウイルスを検出しますが、ヒトインフルエンザウイルスやRSウイルスなど呼吸器に感染する他のウイルスや細菌類には反応しません。その理由は、検出に用いた抗体は鳥インフルエンザウイルスの核たんぱく質にのみ反応し、ヒトインフルエンザウイルスの核たんぱく質には反応しないためです。現在、インドネシア、中国で分離されるH5亜型の最近の株にも反応します。さらに、この迅速診断法の感度(どれほど少量の鳥インフルエンザウイルスを検出できるかの性能)は、現在ヒトのインフルエンザの診療に用いられている比較的高感度な診断キットの感度とほぼ同等です。

 シスメックス(株)と共同研究し、試験研究用試薬として市販に向け準備中です。平成20年12月には、府内の保健所、関西空港検疫所に当該診断キットを研究用として配備し、鳥インフルエンザウイルスに感染した疑いのある患者が発生した場合、診断キットを使用し、同時にPCR検査を行うことにより、キットの性能を評価する治験研究を開始しました。これを活用することにより、迅速に感染拡大を抑制して健康被害をできるだけ最小限にとどめることができることを期待しています。

(副所長 高橋 和郎)

*「鳥インフルエンザ迅速診断法開発チーム」(高橋和郎、加瀬哲男、西村公志、森川佐依子、倉田貴子)による本研究は、平成20年度大阪府優秀職員等表彰の業務健闘部門「発明・開発賞」を受賞しました。


  (参考資料)「鳥インフルエンザ迅速診断法開発」









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