大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第68号− 2009年4月30日発行


腸管出血性大腸菌感染症の血清学的診断法

 腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の一般的な臨床症状は腹痛、水様性下痢および血便であり、重症例では溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすことがあります。診断には糞便からのEHEC検出が必要ですが、検査前に抗生物質などが投与されて菌検出が困難になる場合があります。当所では、病原菌が分離できなかった患者におけるEHEC感染を診断するための血清学的方法として、EHECのO抗原に対する抗体を測定し、その有用性を明らかにしてきました。方法は菌体凝集反応で、抗原はわが国で検出される血清型のうち検出頻度の高い3種類のO血清型の分離株(O157、O111、O26)で作製しています。

 図1にEHEC O157検出患者3人およびHUS患者11人のO157抗体価の変動を病日ごとに示しました。下痢発現時から4病日までに採血した患者ではO157検出の1人(HUS患者でもある)以外はいずれの患者も陰性域でしたが、5〜7病日に採血した患者では5人が陽性域に達していました。また、4病日以降に2回採血されていたにもかかわらず抗体価の上昇が認められなかったHUS患者(矢印の2人)がいましたが、この2人はO26、O111の抗体価も陰性であり、測定した3血清型以外の菌の感染が疑われました。図1に示した症例以外にもこれまで400以上の血清の抗体価測定を実施しており、抗体陽性者では下痢発現後5〜6日には抗体価が上昇し、上昇した抗体価は約1カ月以上陽性域に持続することが判っています。

 平成18年の感染症法改正により、HUS発症例に限って血清中のO抗原凝集抗体又は抗ベロ毒素抗体の検出によりEHEC感染症の届出を行うことが可能になりました。平成20年は大阪府で5人のHUS患者がO157抗体検出によりEHEC感染症として届出されました。届出により接触者調査が行われ家族の感染が判明した事例もあり、採血時期を考慮した抗体測定は感染拡大防止に役立つと考えられます。

(細菌課 田口 真澄)



図1 病日によるO157抗体価の変動


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