大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第69号− 2009年5月29日発行


大阪府の結核発生状況と結核集団感染

 【結核の発生状況】

 今年の4月に20歳代のタレントが結核を発症していたニュースを見て、「若い人でも結核に罹るんだ」とか「まだ結核って病気があるんだ」と驚かれた方もおられると思います。2007年に日本で結核を発症された方は約2万5千人、結核罹患率は人口10万人あたり13.4人でした。日本の結核罹患率は欧米諸国に比べて高いため、世界的に見て日本は結核の「中等度まん延国」と位置付けられています。日本の中でも大阪府の結核罹患率は人口10万人当たり33.7人で、日本で最も結核罹患率が高い都道府県です。2007年に大阪府で結核を発症された方は2969人もおられます。大阪では結核はまだまだ過去の病気ではありません。また、高齢者だけの病気ではありません。図1は大阪府の結核患者年齢分布を示しています。60歳以上の患者さんが多いですが、全体の約2割は40歳未満の若い患者さんです。


 【結核の集団感染】

 結核は、肺結核や喉頭結核の患者さんが咳・クシャミ・会話などで口から出す飛沫を吸い込むことによって感染します。しかし、すべての結核患者さんが感染源になるわけではなく、喀痰の中に結核菌を排出している患者さんだけが感染源となります。喀痰の中に結核菌がいるかどうかは、喀痰を顕微鏡で調べる塗沫検査、喀痰の中の結核菌の遺伝子を増幅して調べる遺伝子検査、喀痰の中の結核菌を培地で増やす培養検査の3つの方法で調べます。図1には大阪府の塗沫陽性の結核患者さんの数も示しています。大阪府では結核患者さんの44.2%が感染源となる塗沫陽性の患者さんで、全国(40.3%)と比べて高いです。

 結核は、発症しても始めのうちは咳・微熱など風邪と紛らわしい症状しか起こさないため、発症してから受診して結核とわかるまでに時間がかかることがあります。咳などの自覚症状が出てから結核と診断されるまでに3カ月以上かかってしまったケースの割合は、全国では8.1%、大阪府では14.1%です。長い期間、結核菌を排菌し続けると周囲に感染を広げる機会が増え、結核集団感染をおこしてしまいます。表1に2000年から2004年に報告された結核集団感染事例数を示します。結核集団発生がおこった集団には、学校や塾など若い人の集団も少なくありません。また、結核集団感染の定義にあてはまらない小規模な結核感染事例も多く起こっています。


 結核集団感染の対策として、患者さんが発生した場合、接触者に対して保健所が検診を行い、胸部エックス線写真による発症者の発見、ツベルクリン反応や血清診断による感染者の発見を行っています。結核の場合、感染した人のうち発症してしまうのは約1割です。発症を予防するために、感染者の方にはイソニアジドという抗結核薬による予防投薬を受けていただきます。予防投薬の効果は50〜80%で、効果は一生続くといわれています。

 公衛研では、集団感染が疑われる事例に対し、発症者から分離された結核菌の遺伝子型別による感染経路や感染規模の調査を実施しています。また、大阪府内の結核患者さんから分離された結核菌すべてを遺伝子型別し、同じ遺伝子型の結核菌を探すことにより、未発見の集団感染が起こっていないか調べています。

 結核を減少させるために、結核集団感染に対する対策は非常に重要です。しかし、結核集団感染の防止には、結核患者さんの早期発見が一番有効です。2週間以上咳が続いた場合は、結核を疑い早めに受診していただけるようお願いいたします。

(細菌課 田丸 亜貴)


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