大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第71号− 2009年7月31日発行


メタノール中毒について

 メタノールはホルマリンその他の原料として使われますが溶剤、洗浄剤、燃料用アルコールとしても用いられています。一方でメタノールは中毒を起こす物質として知られ、日本中毒学会が提言する分析が有用な中毒起因物質15品目の1つとして知られています。分析が有用な中毒とは@死亡例が多い中毒、A分析が治療に直結する中毒、B臨床医からの分析依頼が多い中毒などの観点から検討したものです。又、2008年における日本中毒センターへのメタノールに関する問い合わせ件数は工業用品15件、農業用品3件となっています。

 さてメタノールの中毒量は個人差が大きいのですが、一般的には10〜20mLの飲用で失明し、致死量は80〜120mLとされています。メタノールの急性中毒症状としては、目まい、衰弱感、頭痛、悪心、嘔吐などで、視力障害も早期に出現する場合もあります。

 わが国においては第二次世界大戦後の混乱期、軍が放出したメタノールを酒に混ぜたりウィスキーの代用にしてメタノール中毒が頻発し、終戦から1946年7月までの12ヶ月間に1575人が死亡し、109人が失明しました。1969年、ヘアトニックにエタノールの代わりに70%前後のメタノールを使ったものが出回り東京都が製造中止命令を出した事件もありました(中毒百科、内藤裕史、南江堂)。なお当研究所薬事指導課(当時は薬事指導部)では1979年に圧写式コピー用溶媒(メタノールは無表示)のメタノールの同定を行った報告があります。

 外国では1986年イタリアで、メタノール入りのワインを飲んで22人が死亡した事件がありました。2000年ケニアでメタノールを混入したチャンガーと呼ばれる密造酒で137人が死亡しました。最近起こった事例では、2009年6月4日 インドネシアのバリ島で、メタノールの入った地酒のヤシワインを飲んだ25人が死亡しました。毒物の入った酒類を製造・販売したとして、地元男性が逮捕されました。男は通常の酒類に含まれるエタノールの代わりに、メタノールを使ったと見られています。

 メタノールによる重篤な健康被害はエタノールの代用として酒に混入された事例が多いと思われます。又、日常品にも用いられていますので誤飲には気をつけて下さい。


(薬事指導課 岡村 俊男)


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