大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第71号− 2009年7月31日発行


チクングニヤ熱をご存じですか?

 当所では、蚊が媒介する感染症について検査体制を整えています。そのなかでも、「チクングニヤ熱」という名前はあまり馴染みのない疾患かもしれませんが、 昨年大阪府においても海外からの輸入症例がみられましたので、ご紹介します。

 【チクングニヤ熱とは】

 チクングニヤ熱は蚊が媒介する感染症で、病原体はトガウイルス科アルファウイルス属のチクングニヤウイルスです。潜伏期間は4〜7日、発熱と関節炎が特徴的で、約8割に発疹がみられます。その他の症状として、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹、悪心、嘔吐、出血傾向などがあり、鑑別疾患としてデング熱があげられます。また、関節痛は長期に持続する場合があります。  この感染症は、従来アフリカやアジアの一部で流行が認められていましたが、2005年コモロ諸島などで大規模な流行が発生し、その後インド洋諸島国、インド、スリランカに流行が拡大しました。現在、東南アジア各国で大きな流行がみられており、今年に入ってからタイでは既に3万2千人の患者が報告されています。この感染症は、現在のところ国内での感染や流行はなく、感染症法に規定されていない疾患ですが、海外における発症者数の増加や、海外からの輸入症例の増加をみると、今後警戒が必要になると考えられます。

 【ヒトへの感染】

 チクングニヤ熱はヒト→蚊→ヒトの感染環を持ち、ウイルスを保有する蚊に刺されることにより感染します。主な媒介蚊はヤブカ属のネッタイシマカとヒトスジシマカです。2005年以降のチクングニヤ熱の流行は、ヒトスジシマカが主要な媒介蚊とされており、この蚊は日本でも沖縄から東北地方まで広く分布しています。そのため、ヒトスジシマカの活動が活発な夏期にチクングニヤ熱患者が確認された場合には、デング熱やウエストナイル熱などと同様に蚊対策を考慮する必要があります。

 【大阪府における輸入症例】

 患者は30代男性、平成20年7月16日にインドに渡航し、7月26日に39℃の発熱、頭痛、関節痛で発症。現地(インド)の医療機関でチクングニヤ熱であると診断されましたが、血清診断では陰性でした。軽快後8月8日に帰国しましたが、関節痛が持続するため大阪府内の医療機関を受診し、当所においてウイルス学的検査を実施しました。その結果デングウイルス感染は否定され、チクングニヤウイルスに対する特異的IgM抗体陽性、IgG抗体陽性、中和抗体陽性であり、チクングニヤ熱と確定診断しました(詳細はhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/29/346/kj3464.html)。

 【予防と対策】

 チクングニヤ熱は、実用化されたワクチンはなく、特別な治療法もありません。対策としては蚊に刺されないことが重要です。海外の流行地に行く場合は、長袖・長ズボンの着用、虫除け剤や蚊帳の使用など、蚊に刺されないようにご注意ください。



*鑑別疾患:

 区別(鑑別)をつけなければいけない、似たような特徴をもつ別の疾患。


(ウイルス課 青山 幾子)


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