大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第73号− 2009年9月30日発行


内視鏡消毒剤オルトフタルアルデヒドによる洗浄従事者の健康障害防止について

 オルトフタルアルデヒドとは

 オルトフタルアルデヒド(OPA)は、短時間で強力な殺菌効果を持つ、優れた「高水準消毒剤」※です。グルタルアルデヒド(GA)の代替品として、蒸揮発性がGAの1/20と少なく、より安全であるということで、特に規制もないため広く使用されています。しかし、最近、OPAによるアナフィラキシーショック、化学熱傷、角膜障害、気管支喘息および接触性皮膚炎などの健康被害が報告されています。
 OPAの化学名は benzene-1,2-dicarbaldehydeで、一般名をフタラールといい(分子式:C8H6O2 、分子量:134.13)、微黄色〜黄色の結晶で、強いアーモンド様のにおいがあります。医療用器具・機器・装置専用のアルデヒド系消毒剤として使用されています。市販品はOPAを0.55%含有する製剤で、衣服や皮膚に付着すると黒色様に着色します。
 内視鏡機器は、胃、大腸など粘膜に接触するので、「高水準消毒」処理をした器具を使用します。内視鏡は細い内径を持つ長いチャンネル構造で、十分な洗浄・消毒が難しいため、感染リスクが高い医療器具の一つであると考えられています。しかし、その消毒には内視鏡機器の材質を傷めず、血液などの有機物の存在下で、全ての微生物を短時間に殺菌・不活化できる消毒剤を用いなければなりません。短時間での消毒操作が要求されるのは、内視鏡機器が高価で多数機を所有するのが困難であるため、検査後、直ちに消毒し次の検査に使用しなければならないためです。このため、強力な殺菌作用をもつ消毒剤が選択され、結果としてヒトに健康影響があるものを使用するようになっています。消毒剤は、繰り返し使用しますが、徐々に有効濃度が低下するため、約2週間で新しい液に交換します。

 医療機関における実態

 当所では、府内、OPA使用18医療機関の内視鏡スコープ洗浄室の環境測定と従事者152名(うち女性看護師128名)の自覚症状調査を行いました。
 内視鏡機器の洗浄手順は、検査に使用した機器の外表面および内表面の付着物をブラシでこすり取り水道水で洗い流します。そして、消毒液槽に5分間浸します。次いで、槽から機器を取り出し、表面および内面に付着した消毒液全てを水で洗い流し、乾燥します。洗浄従事者は、特に、消毒液槽から機器を出し入れする際および消毒液交換作業時に曝露を受けます。
 洗浄・消毒方法には、3種類があります。@手動で浸漬槽から機器を出し入れする浸漬槽法、A消毒とその後の水洗を自動で行う自動洗浄機法、B浸漬槽と自動洗浄機の併用法です。1日の検査数が多い機関ほど、自動洗浄機を導入しています。
 内視鏡洗浄室の空気中OPA濃度は、浸漬槽法では11.6ppb以下、自動洗浄機法では2.2ppb以下であり、また、消毒液交換作業時の濃度は、浸漬槽法では3.6±2.7ppb、自動洗浄機法では0.8±1.0ppbであり、いずれも自動洗浄機法の方が低いことがわかりました。
 洗浄従事者152名のうち37名(24.3%)が、皮膚のかゆみ、鼻、喉の刺激および眼の刺激を訴えており、その中にはOPA濃度が低い自動洗浄機法を用いる従事者も含まれていました。

 健康障害防止について

 洗浄従事者の健康障害防止策として、自動洗浄機の導入、発生源付近および流しの前に局所排気装置を設置、適正な保護具(活性炭入り防毒マスク、ゴーグル、ニトリル製手袋)の使用、採用時の教育、特に、ガイドラインに沿った作業の指導が重要であると考えます。


※「高水準消毒」とは

 細菌芽胞を除く全ての微生物を殺滅することであり、内視鏡機器は、粘膜に接触するため「高水準消毒」が要求されます。現在、内視鏡消毒剤の「高水準消毒剤」には、4種類(GA、OPA、過酢酸、強酸性水)の薬剤が認可されています。GAについては毒性が強く、医療従事者に健康障害が発生したことから、日本では2005年に作業環境濃度の管理基準値として0.05ppmが勧告されました。OPAはGAに比較し刺激性が低く、健康被害に関しては、2004年のアナフィラキシーショックの報告まで、ほとんどありませんでした。

(生活環境課 宮島 啓子)


▲ページの先頭へ