大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第74号− 2009年10月30日発行


HIVの感染も広がっています!

 今、感染症といえば世間では新型インフルエンザの話題一色ですが、それ以外にも忘れてはならない重要な感染症はたくさんあります。国内では日本人男性を中心に感染が拡大しているHIVもその一つです。最近では、マスコミで報道されることもほとんどなくなり、人々の興味の対象外となった感がありますが、決してHIV感染者数が減少しているわけでも、感染の広がりが終息しつつあるわけでもありません。HIV感染者/AIDS患者の年間報告数は毎年のように最高記録の更新を続けており、厚生労働省エイズ動向委員会によると2008年に新たに報告されたHIV感染者は1,126名、AIDS患者は431名で、やはりどちらも過去最高でした。
 ここでは、みなさんに少しでもHIVについて興味を持っていただくために、当所で行っている検査・研究業務の一部を簡単にご紹介します。

 【HIV抗体検査について】

 全国の保健所などで実施されているHIV抗体検査数は、自治体やNPOの努力により2002年以降増加が続いています。ところが今年になって、四半期ごとの検査数が1〜3月に比べて4〜6月は約20%も減少していたことがエイズ動向委員会の調査でわかりました。4月下旬に出現した新型インフルエンザの対策に追われ、保健所の手がHIV検査にまで回らなかったのが一因であると考えられています。大阪府でも、保健所等の無料検査の一時的な中止や検査キャンペーンの取り止めが影響したためか同様の傾向が見られており、HIV抗体検査数は1〜3月に3,912件あったものが4〜6月は3,100件に減少しています。一方、大阪府内のHIV感染者及びAIDS患者届出数は1〜3月に引き続き4〜6月も昨年を上回るペースで増加を続けています。当所で実施しているHIV確認検査における陽性件数も、5月に見られた一時的な陽性数の激減を除けば、月別陽性数、累積陽性数ともにさほど大きな変動は見られませんでした(図)。また、感染の拡大をリアルタイムに表していると考えられる感染初期例についても、昨年を超える頻度(2008年:8/122例 6.6%、2009年10月21日現在:7/80例 8.8%)で見つかっており、新型インフルエンザの流行下にあってもHIVの感染拡大に歯止めはかかっていないことが示されました。




 【HIV/HBV共感染に関する調査について】

 昨年の本メルマガでもご紹介いたしましたように、私たちはHIV陽性者におけるB型肝炎ウイルス(HBV)の共感染について調査しています。HIV/HBV共感染例では慢性肝炎に移行する可能性が高くなると言われており、また治療薬の選択にも注意が必要となるため、HIVとHBVに共感染しているかどうかを知ることは治療を行う上で非常に重要です。近年、性行為に伴って感染が拡大する傾向にあり、国内型と比べてキャリア化しやすい欧米型の遺伝子型を持つHBV/AeがHIV陽性者においてしばしば検出されるようになりました。私たちがHIV感染にハイリスクな行動を取っていると思われる人達を対象として行っている疫学調査でも、2008年にHIV陽性が確認された29名のうち7名(24.1%)がHBVに共感染していました。その遺伝子型を解析したところ、7例中5例が欧米型のHBV/Aeで残りの2例は日本では報告数の非常に少ないHBV/Gという遺伝子型であることがわかりました。このB型肝炎ウイルス(HBV/G)がどのような経緯で日本に入って来たのかは不明ですが、今後の感染拡大に注目しています。

(ウイルス課 森 治代)


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