大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第74号− 2009年10月30日発行


セレウス菌嘔吐毒(セレウリド)の検出法について

 細菌によって発生する食中毒は感染型と毒素型に大別されます。毒素型の代表的な食中毒菌には、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌およびセレウス菌があります。このうち黄色ブドウ球菌やセレウス菌による食中毒は、菌が食品中で産生した毒素を摂取することにより嘔吐を発症します。

 セレウス菌は土壌などの自然環境中に広く分布する好気性の芽胞形成桿菌です。セレウス菌食中毒には下痢型とおう吐型がありますが、日本ではおう吐型が大部分を占めます。おう吐型食中毒の原因物質はセレウリドとよばれています。加熱や酸・アルカリ、消化酵素で消化されないので、食品中で産生されると加熱調理をしても分解せずに食中毒を起こします。そのため、セレウス菌食中毒の確定診断には、菌だけではなくセレウリドの検出も重要です。

 セレウリドの検出法は、HEp-2細胞(ヒト喉頭がん由来細胞)を用いた空胞化試験が用いられてきました。しかし、この検出法は、HEp-2細胞にセレウリドを希釈して接種後、18〜24時間培養し、顕微鏡下で空胞を観察する方法です。空胞化の判定には経験が必要で、判定までに時間がかかるなどの問題点があり、食中毒発生時の迅速診断には不向きでした。食中毒の確定診断には生物学的検出法、免疫学的検出法および化学的検出法などを用いて食中毒原因を検出することが重要であると考えられます。そこで今回、農薬の分析などに用いられる高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた機器分析法の開発を試みました。食中毒の原因食品となりやすいチャーハンなどの食品からセレウリドを抽出・精製し、セレウリドを定量する方法を検討しています。HEp-2空胞化活性試験よりも微量のセレウリドを検出でき、迅速性や定量性が向上した分析法が確立されつつあります。この分析法を確立させ、食中毒発生時のセレウリド迅速診断に役立てていきたいと考えています。

* LC-MS/MS

 LC-MS/MSは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とタンデム質量分析計(MS/MS)を連結した分析機器です。試料はHPLC部で分離されたのち、イオン化を経てMS/MS部に導入され、第1MSで質量電荷比によって分離されます(プリカーサイオン)。プリカーサイオンは第1MSと第2MSの間に設置された衝突室内で不活性ガスの衝突によって解離し、プロダクトイオンとなり第2MSで検出されます。MS/MSは1つの物質を2種類のイオンで検出するため、選択性が高く高感度の定量を行うことができます。


(食品化学課 藤田 瑞香)


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