大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第75号− 2009年11月30日発行


食品中の腸管出血性大腸菌O157とサルモネラの同時培養法の開発について

 腸管出血性大腸菌O157は、1996年に堺市で発生した集団感染事例をきっかけとして、食品の安全を監視する上で最も重要な検査対象となっています。また、サルモネラも主要な食中毒原因菌であり、幼児や高齢者の方では高熱や下痢により重症化しやすい危険な細菌です。この二つの細菌の汚染源は主に食肉であるため、食肉の検査ではこの二つの細菌が検査項目になる場合が多くあります。一般的に食品中の病原菌の菌数は少なく、また細菌は冷凍や加熱によって損傷を受けています。そこで検査では、直接的に病原菌を分離することは少なく、食品を増菌液体培地中で培養することによって、病原菌を損傷から回復させて菌数を増やします。O157およびサルモネラの増菌方法は増菌培地の種類も培養温度も異なるので、検体が同じでも2通りの検査をしなければなりません。そこで、この二つの細菌 を同時に増菌するために、損傷菌の増菌のために開発されたUniversal preenrichment broth (UPB)にて培養する方法(UPB法)と従来の増菌方法(従来法)を比較・検討しました。

 腸管出血性大腸菌O157およびサルモネラを10株ずつ牛肉とカイワレに接種し、UPB法と従来法を比較しました。また、市販牛肉59検体(内臓肉6検体含む)と豚肉50検体から、UPB法と従来法を用いてO157の分離を試みました。市販鶏肉205検体についてもUPB法および従来法を用いてサルモネラの分離を試みました。その結果、牛肉にO157を添加した検体では、UPB法は従来法に比べて同程度もしくは優れていました。カイワレにO157を添加した検体では、UPB法は従来法より優れていました。サルモネラの場合、 牛肉とカイワレにおいて、UPB法は従来法と同程度の成績を示しました。市販牛肉の検査では、ミックスホルモン1検体からO157が分離されました。市販鶏肉のサルモネラ検査では、UPB法と従来法で検出率が54.6%と50.7%で有意な差はありませんでした。

 本研究で、UPB法はO157の培養で従来法より優れており、サルモネラの培養では従来法と同程度である事が判明しました。UPB法のもう一つの利点は、O157およびサルモネラの同時培養が可能であり、それにより検査労力や検査スペース、検体採取量等の大幅な削減が期待できると考えられました。最後に、牛肉、豚肉、鶏肉には危険な食中毒菌が潜んでいる可能性が高いので、生で食べるのを避け、十分に加熱して食べるようにしてください。

(細菌課 神吉 政史)


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