大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第77号− 2010年1月29日発行


淀川におけるノロウイルスの分布調査と水中ノロウイルスのオゾンによる不活化(=殺菌)効果について

 ノロウイルスは主に口から感染し、小腸粘膜上で増殖して嘔吐・下痢などの胃腸炎症状を起こすウイルスですが、他の病原ウイルスよりも塩素に対する抵抗性が高く、患者の糞便から排泄されたウイルスは下水処理水中に一部が残存し河川、海へと流下していき二枚貝などに蓄積され再び感染の原因となることから、排水系はノロウイルス伝播の主要なルートとなっています。3つの酸素分子から成るオゾンは非常に強い酸化作用があり、病原体に対する有効な消毒効果を持ち、多くの国で飲料水の殺菌に用いられて日本では「おいしい水」づくりに役立っていますが、ノロウイルスに対する効果についての研究はあまりなされていません。わたしたちは摂南大学と協力して淀川流域におけるノロウイルスの生態調査とオゾン処理によるノロウイルス不活化効果をみる研究から、下水処理におけるオゾンの有用性について役に立つデータを作成しました。

 2007年12月20日に京都市・桂川から枚方市・枚方大橋地点の淀川に至るおよそ18km の区間の7地点で河川水100Lを採取し、セルロース吸着・凝集法により水の濃縮を行い、50mLのBeef Extract液中にウイルスを溶出しました。ノロウイルスの検出はSeminested PCR法を用い、増幅されたノロウイルスDNAはアガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色によってウイルスを確認しました。その結果、河川水7検体中5検体からノロウイルスが検出されました。対照として同様に採取した水道水からノロウイルスは検出されませんでした。オゾンによる不活化実験にはネコカリシウイルス(FCV) と急性胃腸炎患者の糞便から得たノロウイルスを用い、19℃または8℃に調整したオゾン処理実験水にウイルスを1/1,000量加えて撹拌し、オゾンモニターでオゾン濃度を測定しながら実験水の一部を採取し、ウイルスを測定しました。その結果、水温19℃のオゾン水に添加されたFCVは初期オゾン濃度0.133mg/L(=PPM)以上では30秒以内に99.9%以上ウイルスの感染価が減少しました。初期オゾン濃度0.097mg/L未満では有効な不活化は見られませんでした。水温8℃においても同じような結果が得られました。水温19℃においてノロウイルスは初期オゾン濃度0.174mg/L以上では30秒以内にウイルス量が99.9%以上減少しました。また初期オゾン濃度0.113mg/L以下ではノロウイルスの有効な不活化は見られませんでした

 結論として、下水処理場から下流およそ18kmまでのほとんどの地点でノロウイルスが検出されたことから、河川がノロウイルスの主要な移動経路になっていることが推測されるので、下水処理の高度化が必要であると考えられました。ノロウイルスの代わりとして使用したFCVは水温の変化にかかわらず初期オゾン濃度がほぼ0.1mg/L以上あれば30秒以内に99.9%以上不活化されると考えられました。またノロウイルスはFCVよりもおよそ2倍オゾンに抵抗性がありました。塩素により同等の効果を得るためには10mg/L以上が必要であるとされていますので、この研究からオゾンの有効性が示唆されました。上水道だけでなく、下水処理においても塩素処理に加えて、オゾン処理を導入していくことが、ノロウイルス感染症などの防止対策として有効であろうと思われます。

(ウイルス課 山崎謙治)


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