大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第78号− 2010年2月26日発行


非イオン系界面活性剤と皮膚常在菌

 合成界面活性剤は台所用や洗濯用の合成洗剤、またシャンプー、リンス等の洗浄剤の主成分として、家庭内で多く使用されている化学物質です。一方で合成洗剤等による皮膚障害が問題となっており、「家庭用品に係る健康被害病院モニター報告」(厚生労働省)では、皮膚科の報告件数のうち合成洗剤や洗浄剤による皮膚障害が毎年報告されています(H20年度13件)。これは界面活性剤によって皮膚のバリア(表皮の外側の角質層部分)が破壊されることが、原因のひとつと考えられています。

 ところで、界面活性剤には殺菌作用を持つものもあり、皮膚に付着した場合には、皮膚常在菌に影響する可能性が考えられます。皮膚常在菌は角質層内、皮表脂質膜(皮脂腺からの分泌物が汗と共に薄い膜となり皮膚表面を覆っている)、毛包中に常在する細菌で、汗成分や皮脂成分を栄養源として密生することによって外来性細菌の侵入を防いだり、皮表脂質膜の生成に関与して膜を弱酸性に保持するといわれています。したがって、界面活性剤の殺菌作用により、皮膚常在菌が影響を受けると、皮膚の防護機能が弱まる可能性が考えられます。そこで、界面活性剤の皮膚常在菌への影響を検討してみました。

 殺菌作用の測定

 合成界面活性剤にも様々な種類がありますが、陽イオン系のものは殺菌作用があるため、その作用を期待して使用されています。一方、陰イオン系および非イオン系のものは、洗浄作用を目的として洗濯用あるいは台所用合成洗剤に使用されており、殺菌作用は期待されていません。そこで今回は、非イオン系のものに焦点をあて、脂肪酸系基剤6種類および高級アルコール系基剤3種類について、皮膚常在菌に与える影響をCFU測定法 * により検討してみました。細菌としては、皮膚常在菌3種類を用いるとともに、参考のため肺炎桿菌および黄色ブドウ球菌も用いました。

 皮膚常在菌への影響

 脂肪酸系基剤6種類の中では、3種類(@AB)がいずれの菌種に対しても殺菌作用が認められました。これらの基剤の主成分はアルカノールアミドと言われる化合物で、用途は洗剤、化粧品、洗浄剤などです。殺菌作用がもっとも顕著であった基剤@では、濃度が40μg/mlにおいて細菌数が約1/1000に減少しました。一方、高級アルコール系基剤3種類の中では、2種類(FG)がいずれの菌種に対しても殺菌作用が認められました。これらの基剤の主成分はポリオキシエチレンアルキルエーテルと言われる化合物で、用途は化粧品、濃縮型粉末洗剤、液体洗剤などです。作用がもっとも顕著であった基剤Fでは、濃度が40μg/mlで細菌数が約1/1000になりました。実際に使用する濃度は様々と考えられますが、40μg/ml程度でも皮膚常在菌が影響を受ける可能性が示唆されました。市販されている洗剤は種々の洗剤成分の混合物ですが全体として100μg/ml程度で使用されています。

 上記のように、陽イオン系界面活性剤は殺菌作用が期待されて使用されていますから、ある意味では皮膚常在菌に影響することは当然ですが、殺菌作用が期待されていない非イオン系界面活性剤にも皮膚常在菌に対する殺菌作用のあるものが見られたことから、皮膚障害との関連にも留意する必要があると考えられます。

(生活環境課 宮野 直子)


CFU(colony forming unit)測定法:

 界面活性剤をエチルアルコールにより125〜2,000 μg/mlに調整し、サンプルチューブ(1.5ml)に10μl採取し、さらに試験菌液50μl、リン酸緩衝液等を加えます。37℃の温水に1時間つけた後、サンプルチューブから0.2mlを標準平板に塗抹、培養して菌数を測定します。


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