大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第79号− 2010年3月31日発行


2009年、大阪府内の新規エイズ患者報告数が過去最多に!

  昨年(2009年)、発症して初めてエイズウイルス(HIV)への感染が確認され、届けられた例(新規エイズ患者※報告数)が、大阪府で過去最多の62例になりました。エイズ患者報告数はこの3年間、毎年10例程度ずつ増加していますが、これは、これまで検査を受けず、HIV感染に気がつかないままにエイズ発症に至った人が増加しているということであり、大阪府内におけるこれまでの予防啓発・HIV検査体制が十分でなかったことを示しています(図1)。

図1 大阪府の新規エイズ患者数と新規HIV感染者数

 一方、昨年の新規HIV感染者報告数は前年を16例下回り、平成12年以降初めて減少しました。その理由として、昨年保健所等における無料匿名検査の受検者数が減少し、そのため検査でみつかる陽性者(HIV感染者)数が一昨年に比べ減少したことが考えられます(図2)。この保健所等における無料匿名検査の受検者数の減少には様々な理由が考えられますが、一つは昨年日本中を混乱させた新型インフルエンザの流行に因るものと考えられます。厚生労働省エイズ動向委員会の報告においても、昨年の日本全国で報告された新規HIV感染者・エイズ患者報告数の減少が報告されており、新型インフルエンザ流行との関連が指摘されています。もう一つの理由は、利便性が高くこれまで陽性者の検出率の高かった土曜日常設HIV検査が昨年の途中から休止中であることが考えられます。もし、一昨年と同程度の受検希望者が検査を受けていれば、新規HIV感染者・エイズ患者の報告数の合計は、一昨年を上回っていたのではないかと予想されます。

図2 大阪府内の無料匿名HIV検査数とHIV陽性数

 抗HIV薬の研究・開発が進み、現在ではHIVに感染しても早い段階で適切な治療・投薬を受ければ発症することは少なくなってきましたが、感染に気がつかず発症まで放っておくと、治療が困難になるだけではなく、発症まで最長約10年と言われる潜伏期間中に性交渉相手に感染させてしまう恐れがあります。

 現在、大阪府内の新規HIV感染者・エイズ患者報告のほとんどが男性であり、感染経路別の内訳では大部分が同性間性的接触であることを考えると、感染拡大の中心であるMSM(men who have sex with men:男性と性交渉を持つ男性)や、コンドームを用いず、性感染症に対して無防備な性交渉を頻繁に行う人を対象にHIV検査を受検するよう啓発することが重要であると思われます。また、そのために受検機会の拡大を目的とした、より利便性の高い検査体制を構築していく必要があります。

(ウイルス課 川畑 拓也)


※「エイズ患者」とは、HIV感染が確認され、かつ「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に定められたエイズ指標疾患を発症している場合を指します。同様に「HIV感染者」とは、HIV感染が確認され、かつ無症状であるかあるいはエイズ指標疾患以外の症状が有る場合を指します。エイズ(後天性免疫不全症候群)・HIV感染症は、感染症法において麻疹や梅毒などと同じ五類全数把握疾患の指定を受けた感染症発生動向調査の対象疾患で有り、診断後7日以内に最寄りの保健所へ届け出ることが義務づけられています。


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