大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第80号− 2010年4月30日発行


肺炎球菌ワクチンについて

 最近(2010年2月)、小児用肺炎球菌ワクチンが発売となりました。このワクチンは海外で高い効果が認められており、国内への早期導入が期待されていました。

 肺炎球菌は、ヒトの口腔内や気道に常在している細菌で、肺炎、髄膜炎、中耳炎などの原因となります。主に、高齢者や幼児、免疫の弱っている方で病気を起こし、髄膜炎を発症した場合には後遺症が残ることがあります。治療は抗菌薬の投与によって行い、発症後できるだけはやい段階で治療を開始することが重要です。近年、世界的に抗菌薬が効きにくいペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)等の薬剤耐性菌が増加したため、ワクチンによる予防が重要視されるようになりました。肺炎球菌ワクチンは大きく分けて2つの種類があり、(1) 2歳〜高齢者を対象とした莢膜多糖体ワクチン、(2) 小児用肺炎球菌結合型ワクチンとがあります。

 (1)2歳〜高齢者を対象とした莢膜多糖体ワクチン
 肺炎球菌の表面にある物質(莢膜多糖体)をターゲットとしたワクチンで、23種類の莢膜多糖体に対応しています。このワクチンは乳幼児では十分な免疫を得ることができず、2歳以上の免疫不全者や高齢者が主な対象となっています。国内への導入は1988年からで、高齢者の肺炎において高い予防効果があることが国内の研究(英語論文)でも報告されています。また、新型インフルエンザウイルス感染者に合併する肺炎の予防効果も期待されています。高齢者の肺炎予防として用いる場合、65歳以上で5年以内に本ワクチンの接種を受けていない方を対象に1回接種します。

 (2)小児用肺炎球菌結合型ワクチン
 莢膜多糖体とキャリア蛋白とを結合させたワクチンで、生後2ヶ月〜9歳までが対象です。乳幼児は免疫が未成熟で(1)のワクチンが無効なため、キャリア蛋白を用いることで肺炎球菌に対する免疫を得られるようになっています。今回発売となったのは、病気を起こすことの多い7種類の莢膜多糖体をターゲットとした7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-7)です。海外では2000年頃から導入が進み、重篤な肺炎球菌感染症が著しく減少したなど高い予防効果と安全性が認められています。接種回数は2ヶ月頃〜1歳の間に3回、その後追加接種1回の計4回となります。

 これらのワクチンが広く普及すれば、肺炎球菌感染症の減少が期待できます。しかし小児用は、スケジュール通りに実施することが難しい、同じく髄膜炎を予防する「ヒブワクチン」とあわせるとトータルで6万円近く費用がかかる、といった問題があります。また、莢膜多糖体ワクチンは1回の接種で6000円程度ですが、市町村による公費助成を実施している地域は少なく、海外に比べると低い接種率にとどまっています。
 ワクチンによる肺炎球菌の予防は、医療費から見た費用対効果の面でも有用であると考えられるため、今後、公費による助成や定期接種化などワクチンの接種率を高める施策の実施が期待されます。


(細菌課 河原 隆二)


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