大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第82号− 2010年6月30日発行


食品中のカンピロバクターの迅速、簡便な検査法の開発について

 カンピロバクターはニワトリ、ウシ、ブタなどの腸内に棲んでいる細菌ですが、これが付着した食品をヒトが食べると食中毒が起こる場合があります。カンピロバクター食中毒は、細菌性食中毒の中では近年発生件数が最も多い食中毒となっています。その原因食品としては、鶏肉及びその内臓、牛レバー等が原因であった事例が多く報告されているため、肉類等の食品におけるカンピロバクターの汚染実態を調査し、その結果に基づいてカンピロバクター食中毒に対する注意を喚起することは、本食中毒を予防する上で重要です。一般的に、食品のカンピロバクター検査は細菌培養法により実施されており、それは、食品に付着したカンピロバクターを増やす工程(増菌培養)、増やした本菌を選択的に検出する工程(選択分離培養)、そして最後に検出された菌がカンピロバクターかどうかを確認する工程(同定)の3つから成ります。しかし、カンピロバクターは、増殖速度が非常に遅く、増菌培養に1〜2日間、その後の分離培養に2日間を要するため、最終的な検査結果が得られるまでに非常に長い日数を必要とします。更に、カンピロバクターは5〜15%の酸素が存在する特殊な環境でしか発育できないため、その培養には特別な器具も必要となります。

 そこで、当研究所では、食品のカンピロバクター検査を簡便、迅速化するため、特別な器具を必要としない簡便な増菌培養法と迅速なカンピロバクター検出キットを組み合わせた検査法を新たに開発しました。この方法で用いられるカンピロバクター検出キットは、当研究所が民間企業との共同研究により開発したもので、イムノクロマト法の原理を応用した検出キットです(図1)。本キットでは、陰性検体はコントロールラインのみが出現し(図1の(2))、陽性検体は、このラインに加えて、 テストラインが出現し(図1の(1))、これで陽性と判断されます。本キットは、従来法では選択分離培養法で2日間が必要であった増菌培養液からのカンピロバクターの検出を僅か15分で実施できるため、検査日数を大幅に短縮することが出来ます。その結果、今まで4日以上を要した食品のカンピロバクター検査が、新たに開発した検査法では、2日で結果が得られます。この方法を使って市販の鶏肉類68検体を検査したところ、従来法の場合(カンピロバクター陽性54検体)よりも多くの61検体からカンピロバクターを検出することができ、その有用性が実証されました。

 実際のカンピロバクター食中毒は、刺身やタタキなど鶏肉を生で食べたり、十分に加熱せずに食べたりしたことにより発生しています。また、鶏肉を取り扱った手指や調理器具を十分に洗浄・消毒しなかったために、これらを介して他の食品にカンピロバクターが付着して食中毒が発生した事例も多くあります。従って、肉類の生食は避け、十分に加熱してから食べること、また、サラダやおひたしなどは、肉類を調理する前に作り、他の食品を二次汚染しないように注意することがカンピロバクター食中毒の予防には重要です。

(細菌課 川津 健太郎)

 ※図1をクリックすると検出キット(拡大写真)が表示されます。