大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第86号− 2010年10月29日発行


温泉水中モノクロラミンの自動分析について

 近年、循環式浴槽を使用した温泉施設では一般的に塩素消毒が行われていますが、特にアルカリ性の温泉水の消毒においては塩素の消毒効果が不十分になることから、レジオネラ属菌の増殖を完全に抑制することが難しいと指摘されています。

 これらの状況を受けて、アルカリ性の温泉水でも消毒の持続効果があるモノクロラミンによる消毒が見直されるようになり、レジオネラ属菌、またレジオネラ属菌の宿主となるアメーバに対してもモノクロラミンによる消毒が有効に機能することが報告されました。しかし、温泉施設におけるクロラミン消毒を十分に管理するには、濁度の高い及び着色した温泉水でも正確にモノクロラミンを定量できることが必要であり、また簡便な定量法が求められています。現在、モノクロラミンの定量にはDPD法が用いられ、目視による簡易な方法ですが、濁度の高い及び着色した温泉水では正確に定量することが出来ません。

 これまでに、温泉水の消毒剤である遊離残留塩素、二酸化塩素の自動分析について報告してきましたが、今回は濁った温泉水や着色した温泉水でも正確に定量することが出来るモノクロラミンの自動分析法(インドフェノール法)について検討しましたので報告します。

 モノクロラミンの分析方法は、ガス分離管を利用した連続流れ分析装置を用いて行いました。ガス分離管は、ガス透過性を有する膜で管状の多孔質テフロン管(長さ80cm、内径1mm、外径2mm、気孔率60%、孔径1μm)を螺旋状のガラス管(長さ80cm、内径3.8mm)の中に挿入し、管が二重になった管です(図1)。多孔質テフロン管を境にして、外管には検水、内管には0.05mol/L水酸化ナトリウム溶液を流しました。検水中に存在するモノクロラミンはガス透過性膜で分離され、水酸化ナトリウム溶液に吸収されます。その後、この水酸化ナトリウム溶液にフェノール・ニトロプルシッド溶液が添加されると、モノクロラミンはフェノールと特異的に反応してインドフェノールを生成し青色を呈します。この青色の吸光度を比色計で測定し、モノクロラミンの定量を行いました。

 


 本分析法における最適化を検討した結果、本法はモノクロラミンの検量線は3mgCl/Lまで直線性があり、検出限界値は0.02mgCl/L(S/N=3)、検水量は4mlで1時間に20試料の分析が可能でありました。また、本自動分析法を装備した連続流れ分析装置は、モノクロラミンのモニターとしても利用可能であると考えらました。次に、本法における共存物質による影響について検討しました(モノクロラミン標準液(2mgCl/L)に各種の共存物質を添加しました)。濁度成分であるカオリンが検水中に1000mg/L存在しても、モノクロラミンの回収率は100%を示し、濁度(カオリン)の影響を受けずにモノクロラミンを分析することが出来ました。また、塩化第二鉄(鉄として100mg/Lを含む)をモノクロラミン標準液(2mgCl/L)に添加し、pHを8.3に調整した試料は濁度120度、色度800度であったが、モノクロラミンの回収率は98%を示し、色度の影響を受けずにモノクロラミンを分析することが出来ました。さらに、温泉の主成分であるNa+、K+、Ca2+、Mg2+、HCO3-、Cl-、SO42-、微量成分であるNH4+、Li+、マンガン等による影響も受けませんでした。また、ジクロラミンついては、有効塩素として1/2のモノクロラミンとして定量されることが判明しました。最後に、実験室で調製した3種類の温泉水(Na-HCO3泉、Na-SO4泉、Na-Cl泉)における添加・回収実験では、変動係数は0.4〜1.5%、回収率90〜108%で共に良好な精度と回収率でありました。

 以上の結果、本法は濁度の高い及び着色した温泉水でも特異的にモノクロラミンを分析可能であり、温泉水のモノクロラミン消毒の衛生管理に有効な分析法であることが示唆されました。  

(生活環境課 田中 榮次)


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