大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第89号− 2011年1月31日発行


浄水処理過程における有機フッ素化合物の挙動について

 撥水・撥油剤,泡消火剤,フッ素樹脂の合成補助剤などに使用される有機フッ素化合物(PFCs)であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)が水道水にも存在することが報告されており、水道水を飲むことによるヒトへの健康影響が懸念されています。アメリカ合衆国環境保護庁(USEPA)は水道水への暫定健康勧告としてPFOSを200 ng/L、PFOAを400 ng/ Lに設定しました。また日本においても、評価値はないもののPFOSおよびPFOAは水道水質基準の要検討項目に追加され、情報の収集が行われています。

 大阪府が行った大阪府内の主な浄水場を対象にした調査においても、水道原水および水道水から高頻度に検出されました1)。水道原水・水道水中のPFOS・PFOA濃度を比較したところ、浄水処理により効果的に除去されておらず、水道原水中の濃度が水道水に大きく影響することがわかりました。浄水処理過程におけるPFOS・PFOAの挙動に関する研究はあまり報告されておらず、その実態は不明です。そこで、浄水処理過程におけるPFOS・PFOAの挙動を把握し、水道水からヒトへのPFOS・PFOAの曝露量を減らす方法を考えるために、活性炭処理を行う高度浄水処理を導入している浄水場を対象に浄水処理過程別にPFOS・PFOAの分析を行い、PFOS・PFOAの挙動を調べました(図1)。

 処理過程におけるPFOS・PFOA濃度推移の例を図2に示します。水道原水、砂ろ過水およびオゾン処理水においてPFOS・PFOA濃度の大きな変化は認められませんでした。このことより、砂ろ過処理・オゾン処理はPFOS・PFOAの処理に効果がないことがわかりました。また、オゾン処理によってPFOS・PFOAが増加することがないことも明らかになりました。

 活性炭処理におけるPFOS・PFOAの除去効果は、活性炭の使用期間により異なっていました。使用期間が1年未満の活性炭を使用した活性炭処理ではPFOS・PFOAは効率よく除去されていました。これによりPFOS・PFOAの除去には活性炭は有効であることが明らかとなりました。しかし、長期間使用した場合、PFOS・PFOAは除去されず、活性炭処理前の水と同レベルかそれ以上の濃度が検出され、活性炭を数年間使用する現在の使用方法では、PFOS・PFOAは除去できない状態になっていることもわかりました。このように活性炭による除去の有効期間が短いのは、PFOS・PFOAが非常に水溶性の高い化合物であるためだと考えられます。

 水道水は複数の活性炭処理水が混合されるため、水道水中濃度が水道原水中濃度より高く検出される場合も認められました。しかし、水道水で検出されたPFOS・PFOAの濃度はそれぞれ1.3〜3.7 ng/Lと6.5〜48 ng/Lであり、USEPAの健康暫定勧告の値よりも十分に低いため、人への健康影響が現れる可能性は低いと考えられます。



図1. 高度浄水処理過程の例(番号は採水箇所)




図2. 浄水処理過程におけるPFOS・PFOAの濃度推移の例(数字は活性炭の使用日数)
              RW:水道原水、SF:砂ろ過水、OW:オゾン処理水、AC:活性炭処理水、FW:水道水
              TOC:全有機炭素(水中に含まれる有機物の指標)


 1) Takagi, S., Adachi, F., Miyano, K., Koizumi, Y., Tanaka, H., Mimura, M., Watanabe, I., Tanabe, S., Kannan, K. (2008) Perfluorooctanesulfonate and perfluorooctanoate in raw and treated tap water from Osaka, Japan. Chemosphere 72, 1409-1412

(生活環境課 高木 総吉)


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