大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第92号− 2011年4月28日発行


食品中の放射性物質の測定について

 先日の東日本大震災によって、福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発とします)から放射性物質が周囲に漏れだすこととなり、現地では収束に向けて作業が行われています。放射性物質から出される放射線には、私達の体の細胞にある遺伝子等を傷つける作用があり、将来的にがんの発生等の健康への悪影響が危惧されます。この健康への悪影響を避けるためには、定められた以上の放射線に曝露されないことが重要です。

 周辺自治体を中心に住民生活の安全のために、空気、水、土壌あるいは食品中の放射線量あるいは放射性物質の量を監視するようになりました。その結果、水道水や一部の食品中から原子力発電所に由来すると考えられる放射性物質(ヨウ素-131とセシウム-137等)が検出され、水道水では乳幼児の摂取制限や福島第一原発から近い産地の一部農産物の出荷制限が施されました。

 大阪府でも空気中の放射線量や水道水中の放射性物質の量を測定して、その結果を公表しています。府民の食の安全・安心を確保するため、食品中の放射性物質を測定する準備を開始しました。このことについて簡単にお話ししたいと思います。ただ、聞き慣れない語句が多くありますので、放射性物質等に関する語句を整理しつつ記します。

(1)放射性物質とは

 放射性物質は、放射能(放射線を出す能力)をもつ物質です。この放射性物質には、原子力発電所に由来すると考えられるヨウ素-131とセシウム-137のような人工的なものと、カリウム-40のように自然界に微量に存在するものがあります。この放射性物質は、一定の効率で他の物質に変わる(崩壊といいます)際に放射線を出します。この放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線あるいは中性子線などがあります。これら放射線の性質は、多様で壁や金属を透過する能力や遺伝子を傷つける力も、それぞれ異なります。また、放射性物質自体も様々で、崩壊する速度や崩壊の際に出す放射線の種類や量も異なります。放射性物質は、崩壊して放射能が低下していきます。この放射能が半分に低下するまでに要する時間を半減期といいます。

(2)放射性物質の単位について

 放射性物質の量については、ベクレル(Bq)という単位が使用され、これは1秒間に放射性物質が崩壊する回数として規定されています。食品中の放射性物質の検査においては、放射性物質の量を測定しますのでベクレルという単位で規定されます。一方、放射性物質から出された放射線に対するヒトへの影響については、放射性物質からの距離やその放射線の種類によって異なりますので、ヒトへの影響を加味した放射線の量(実効線量)としてシーベルト(Sv)という単位が使用されています。私達は、もともと自然界に存在する微量の放射性物質から放射線を受けています。さらにレントゲン撮影などの医療行為からも放射線を受けています。これらについては安全な実効線量として管理されています。その値は、ヒトが受けた放射線量になりますのでシーベルトという単位で規定されています。

(3)放射性物質の測定について

 放射性物質は、先に述べたように放射線を出します。この放射線をカウントして放射性物質の量を測定します。今回の原発から漏れ出た主要な放射性物質は、ヨウ素-131とセシウム-137です。これらはそれぞれ、ガンマ線を出しながら崩壊します。このガンマ線を特殊な計測器で測定し、試料中の放射性物質の量を明らかにします。その計測器には、いくつかありますが、水道水や食品中の微量の放射性物質の量の測定によく使用されるゲルマニウム半導体検出器を用いた測定に絞ってお話します。

 ゲルマニウム半導体検出器は、放射性物質が出すガンマ線を高感度に検出できる機器です。放射性物質によって、ガンマ線のエネルギーが異なりますので、その差によって放射性物質を区別することができ、ヨウ素-131とセシウム-137もそれぞれ検出可能です。高感度に検出するために外部からのガンマ線の影響を受けないよう、そのセンサーの部分は、厚い鉛で覆われています。このセンサーの形にくぼんだ特殊な容器に水や刻んだ野菜等を均一に詰め込んでセットします。その後、10分間から10時間かけて試料から出されたガンマ線をカウントして、試料1kgあたりの放射性物質の量(Bq/kg)を明らかにします。その分析結果と食品衛生法で定められた規制値と照らし合わせ、規制値を超過した食品は、流通停止等の処置が取られることになります。

 

(食品化学課 高取 聡)


▲ページの先頭へ