大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第93号− 2011年5月31日発行


腸管出血性大腸菌はO157だけではありません

 ユッケによる食中毒で4人もの死者が出るという事件に衝撃を受けた方も多いことでしょう。今回の食中毒の原因菌であるO111は、O157と同じ腸管出血性大腸菌(EHEC)の仲間です。今年になって急に出現したわけではなく、1986年には松山市の乳児院でO111による集団下痢症が発生し、2歳9ヵ月のお子さんが亡くなっています。日本で分離されるEHECのO抗原(菌体抗原)タイプは約60種類もあり、毎年少しずつ増えています。最も多いタイプはO157で約70%を占め、2番目はO26で約20%、O111は3〜5番目で2〜7%あります。タイプの決まらないものもありますので、細菌検査に携わる方は注意が必要です。

 EHECは、下痢や腹痛などを起こす下痢原性大腸菌の中でも特に気をつけなくてはいけない病原菌です(第90号参照)。口から入ったEHECは大腸で増殖し、ベロ毒素と呼ばれる毒素を産生して下痢や血便をおこすだけでなく、ベロ毒素が腎臓や脳へたどりついて血管内皮細胞を傷つけ、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症など重篤な合併症を引き起こすことがあるからです。感染した疑いがあれば、市販の下痢止めなどを飲まず、すぐに病院を受診してください。

 そもそもEHECはウシなどの反芻動物の腸内に棲んでいて、成牛は無症状です。2004〜2006年の調査によると、ウシのO157保菌率は14.4%と報告されています。O157以外のO抗原タイプも含めるともっと高率であるという調査結果もあり、農場で保菌率を低下させる努力とともに、と畜場で枝肉等への汚染を防ぐ努力や流通・加工の段階で汚染や菌数増加を防ぐ努力が必要です。家庭では良く加熱して食べることはもちろんですが、台所で汚染が広がらないよう生肉に使った調理器具や手を良く洗うよう心がけましょう。

 また、食品からだけでなくトイレのドアノブやタオルを介して感染することがあります。EHECの感染が確認されていない場合でも、下痢をしたときには手を消毒し、オムツや汚れた下着の処理には使い捨て手袋を使うようにしてください。

(細菌課 勢戸 和子)


▲ページの先頭へ