大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第93号− 2011年5月31日発行


大阪府内および近隣地域のHIV陽性者におけるB型肝炎ウイルス・梅毒トレポネーマの感染歴とB型肝炎ウイルス遺伝子型の解析

 性感染症とは性的接触によって感染する病気のことで、HIV感染症、B型肝炎、梅毒、淋病、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス感染症等、多数存在します。性感染症は感染経路が同じであるため、一人が数種類の病原体に重複感染することも珍しくありません。

 私たちは2006年から2010年に大阪府内の皮膚科、泌尿器科、性病科、婦人科等の診療所と協同して、HIV感染に対してリスクの高い行動をとっていると思われる受診者やHIV抗体検査希望者を対象としたHIV疫学調査を行いました。調査検体のうち、HIV陽性の113例についてB型肝炎ウイルス(HBV)のHBs抗原(現在HBVに感染しており、他人に感染させる可能性があることを示す)、HBc抗体(HBVに感染している、あるいは過去にかかったことがある事を示す)、HBs抗体(過去のHBV感染を示し、HBV感染防御抗体でもある)、梅毒トレポネーマ抗体(現在梅毒トレポネーマに感染している、もしくは過去に感染したことを示す)の有無について調べました。またHBs抗原陽性の検体については、HBVの遺伝子型を調べました。

 その結果、113例中15例(13.3%)がHBs抗原陽性でした。HBs抗原陰性例のうち、HBs抗体、HBc抗体共に陽性あるいはいずれか陽性であるものは54例(47.8%)であり、HBVに感染したことがある人はHBs抗原陽性15例を合わせた69例(61.1%)でした。HBs抗原陽性であった15例のHBV遺伝子型はAの亜型であるAeが9例(60.0%)、Gが3例(20.0%)、Cが3例(20.0%)でした。梅毒トレポネーマ抗体は53例(46.9%)で陽性でした。

 今回行った、性的に感染リスクの高い人を対象とした調査では、HIV感染者の77%でB型肝炎や梅毒のいずれかあるいは両方に感染歴がありました。またHBVの遺伝子型は外国型のAeやGが80%を占めていました。

 B型肝炎については日本ではこれまで遺伝子型BやCがその大半を占めていました。しかし最近では、都市部の同性間性的接触を介して、他の型より慢性化しやすい遺伝子型Aeの感染が増加傾向であることが報告されており、私たちの調査もこれを裏付ける結果となりました。

 性感染症にはHIVに罹患するリスクを高めるものもあり、またHIVに感染して免疫が低下している状態で他の性感染症にかかると、重症化したり治るのに時間がかかったりします。

 これらの事から、性感染症に感染する事を他人事だと考えずに、誰もがその感染リスクをもっている事を理解し、不特定多数の人と性的接触をしない、コンドームを使いセーファーセックスにつとめる等の予防対策をとる事が何よりも重要です。そして、少しでも身体の異変に気づいたら早期に医療機関を受診し、診断、治療を受ける事も重要です。HIVのワクチンは開発途上で、まだ実用化されていませんが、HBVに関してはワクチンで予防する事ができますので、感染リスクが高いと思われる方は医療機関で相談されると良いでしょう。

 

(ウイルス課 小島 洋子)


▲ページの先頭へ