大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第95号− 2011年7月29日発行


日本紅斑熱とマダニについて

 日本紅斑熱は、1984年に徳島県において初めて発見された感染症で、その後、関東から九州にかけて広く分布することが明らかにされてきました。これまで、全国の患者数は年間数十名程度で推移していましたが、2008年以降は毎年130名以上の患者が確認されており、この感染症に対する注意が必要になってきています。また、2008年には日本紅斑熱と少し異なるタイプの紅斑熱が宮城県において初めて確認されました。大阪府でもこれまでに4例の日本紅斑熱が発生しており(2例は他県で感染し、帰ってきてから発症したと思われる症例)、最近では2010年に患者が発生しています。

 日本紅斑熱の病原体は、リケッチアと呼ばれる細胞内寄生性の小さな細菌の一種ですが、マダニによって媒介されます。マダニは人などの温血動物にとりついて血液や体液を吸いますが、その時にまず唾液を注入します。そして、その唾液の中にリケッチアが含まれていると、それが人の体内に入って増殖することになります。高熱、発疹、頭痛、倦怠感などの症状をともなって発病しますが、適切な治療をしないと重症化することがあります。

 普通ダニと言えば、肉眼ではほとんどわからないくらいの大きさのものが多いのですが、マダニは比較的大型の種類で、肉眼で見える大きさです(種類にもよりますが、だいたい血を吸っていない成虫で2〜5mm前後、血を吸って満腹になると1〜2cmにもなります)。マダニは私たちにとりつくとセメント物質と呼ばれる物質を分泌して口(口下片と呼ばれる部位)(図1)を皮膚に固着させ、そのまま数日間にわたって吸血しますが、その間、特に痛みやかゆみを感じないことが多いため、十分吸血して大きくなってから気づくことも少なくありません。吸血する前は、スイカの種に脚がついたような形をしていたものが(図2)、満腹になった時は、腹部が著しく肥大して小豆のようになり、まるで別の生き物のように感じられます(図3)。

 マダニはもっぱら野山に生息していますが、草の葉先などにいて野生動物などがやってくるのを待ち構えています。一番前の脚の先に炭酸ガス(私たちの吐く息の成分)などを感知する器官を持っており、野生動物が通りかかるとすばやくとりつくというわけです。そこをたまたま通りかかった私たちも例外ではありません。農林業はもちろんですが、ハイキング、山菜取りなどで野山に入る場合も注意が必要です。以下に注意点をいくつか挙げておきますので参考にしてください。

  • 野山へ出かけるときは、できるだけ長袖・長ズボンを着用し、しっかりした靴(できれば長靴等)を履いて、肌の露出を避ける。服装は白っぽい色のものの方がマダニを発見しやすいという利点があります。また、虫よけスプレーを携行し、必要に応じて使用する。
  • 野山へ出かけた日は、帰宅後必ず入浴し、マダニのようなものがついていないかよく点検する。
  • もし、マダニがついていたら自分でとらずに皮膚科を受診する(無理に引っ張るとダニの口が残ってしまい、化膿したり、結節ができて長くかゆみが続いたりします)。
  • 野山へ出かけてから一週間くらいたって、急に高熱が出たり、体中に発疹が出ていたり、刺し口(マダニがとりついた部位で、黒いかさぶたのようになる)のようなものがあった場合は、皮膚科や内科等を受診して、野山へ出かけたことを詳しく申告する。
  • 患者が多く発生している地域に出かけるときには、特に注意する。


図1 口(口下片)




図2 吸血前



図3 吸血後

                                  

(ウイルス課 弓指 孝博)


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