大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第10号− 2004年06月30日発行


ストレスのメカニズムと診断評価法の検討!

 現代はストレス社会といわれています。ストレスにも「良いストレス」と「悪いストレス」があり、仕事の目標設定などにより生ずる「良いストレス」は、仕事を効率化させよい成果をもたらしますが、「悪いストレス」は、生活活動を停滞させ、生活習慣病など種々の疾患の発症や増悪をもたらす危険因子となります。当所では、ストレスの診断方法の開発や動物実験によるメカニズムの研究を進めています。種々の職業を持つ中高年を対象に、ライフスタイルの聞き取り調査と生理指標を探索した結果、Tリンパ球*の増殖活性やサイトカイン産生能が、職場や家庭で受けるストレスや悪いライフスタイルなど健康度を示す総合的な診断方法となることを明らかにしました。最近では、介護労働者でこれらの免疫機能の顕著な低下がみられ、労働条件の改善が急務であることがわかりました。

 疾患の発症に重要な、慢性ストレスのメカニズムについてはよくわかっていません。そこで、慢性的精神的ストレスのモデルマウスを樹立し、生体影響を調べました。その結果、慢性ストレスによって神経伝達物質の一種「サブスタンスP」などの血中濃度が上昇し、環境とのバリアとして重要な役割を持つ皮膚や腸管免疫系が影響を受け、化学物質によって起こる接触皮膚炎や化学物質過敏症様皮膚炎が顕著に悪化することがわかりました。現在、近年発展してきたcDNAアレイによる遺伝子発現解析技術**を用い、これらの疾患の発症や増悪に関わる遺伝子を網羅的に探索し、治療に役立つ遺伝子の同定を目指しています。

(生活衛生課 中野)


*:

 リンパ球の中にはTリンパ球とBリンパ球がある。Bリンパ球は主として抗原に対する抗体をつくる。Tリンパ球はBリンパ球の抗体産生や、取り込まれた病原体の破壊を助け、ウイルスに感染した細胞の破壊を行い、遅延型アレルギーを起こすなど広範な働きを持つ。


**:

 細胞の核内の遺伝子情報は一旦メッセンジャーRNA(mRNA)に変換されたあと、細胞質中で蛋白質に翻訳され生命活動を行う。組織や細胞に含まれるmRNAを、そのままあるいはcDNAに変換させたのち、基板上に数千から数万の遺伝子をスタンプしたcDNA アレイに結合させ、結合した遺伝子の種類や量を測定し、網羅的に分析する方法。これらの技術を用いて、ある特定の組織や細胞で発現している遺伝子の特徴が発現プロファイルとして得られる。



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