大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第13号− 2004年09月30日発行


紫外線吸収剤及びその関連化合物による女性ホルモン様作用

 近年、工業や農業、商業活動、日常社会生活を通じて使用されている多くの合成化学物質の中には、内分泌機能を攪乱し、環境中の生物やヒトに悪影響を及ぼす可能性のあるもの (内分泌攪乱化学物質) が存在することが指摘されてきました。探索の結果、60種類余の化合物が疑わしい化合物としてリストアップされています。その中には、種々の農薬、ダイオキシン類やPCB、フタル酸エステル類、ビスフェノールAやアルキルフェノール類、等と共に、医薬品等の合成原料や保香剤として使用されるベンゾフェノン(BP) が報告されています。また、Benzophenone-3 (BP-3)等のBP類は、紫外線吸収作用を持つことから日焼け止めクリーム等の化粧品中で多く使用されています。最近、化粧品に使用される他の紫外線吸収剤 (octyl-methoxycinnamate (OMC)や 4-methylbenzylidene camphor) も同様に、内分泌攪乱作用のうち女性ホルモン様作用を示すことが明らかになってきました。一方、ドイツ女性の母乳中に紫外線吸収剤のBP-3やOMCが脂肪重量あたり数十ppbの濃度で汚染が検出されたとの報告があり (Hany & Nagel, 1995)、胎児や新生児への移行による影響を含めヒトに対する健康影響が懸念されます。

 私達は、これらの報告以外の紫外線吸収剤にも女性ホルモン様作用が認められるか否かを調べるため、化粧品に使用される成分個々(合計33種類)についてヒト乳ガン培養細胞MCF-7や、当所で開発されたヒトのエストロゲン反応遺伝子導入のチャイニーズハムスター卵巣細胞 (CHOOSERE)による細胞増殖試験、及びエストロゲンリセプター(ER)に対する女性ホルモン17β-estradiol (E2)との結合競合試験を指標として女性ホルモン様作用を測定しました。その結果etocryleneやoctocryleneに、活性を示す他の紫外線吸収剤と同程度かやや弱い活性が認められることが分かりました(活性強度は、細胞増殖試験ではetocryleneでE2の約10万分の1、octocryleneでは約100万分の1、またERαを用いた結合競合では、etocryleneは合成女性ホルモンdiethylstilbestrol (DES)の活性の約千分の1、octocryleneでは約1万分の1、ERβを用いた結合競合では、etocryleneでDESの約百分の1、octocryleneでは約千分の1)。今後、これらの紫外線吸収剤の環境中での汚染状況調査を始め、実験的に女性ホルモン様作用が認められる化合物が、母乳を含めどの程度生体内に蓄積しているのか、また母乳を介して新生児に移行する割合はどの程度なのか等の健康に結びつく課題を調査・研究していく必要があると考えています。 

(食品化学課 松本)


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