大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第16号− 2004年12月28日発行


河川水中に棲息する自由生活性アメーバの疫学的調査!

 自由生活性*アメーバは、水や土壌中に広範囲に棲息している原生動物です。これらの自由生活性アメーバのほとんどは、ヒトには無害な非病原性のものですが、ある種のものはヒトの感染症の原因となる事が明らかになって来ました。自由生活性アメーバによる感染症にはアメーバ性の脳炎と角膜炎が知られています。アメーバ性脳炎には、ネグレリア・フォーレリによる原発性アメーバ性髄膜脳炎とアカントアメーバ属による肉芽種性アメーバ性脳炎があります。前者は健康人における急性の髄膜脳炎で、また後者は免疫不全者の日和見感染の原因となっており、両者とも致死率が極めて高い感染症です。海外では欧米を中心に百名以上の死者が報告されており、日本でも現在までに6例の死亡例が報告されています。アメーバ性角膜炎は主としてコンタクトレンズ洗浄液を介してアカントアメーバ属のアメーバが角膜に感染することによって引き起こされます。このようなアメーバによる直接的な病原性の他に、自由生活性アメーバは非病原性のものも含めて、レジオネラ属菌、大腸菌O157、好酸菌などが寄生して増殖する場となっています。特に公衆浴場等でのレジオネラ菌の増殖に、菌の宿主として深く関与しており、その存在が公衆衛生学上の問題となっています。

 当所では環境中の自由生活性アメーバの汚染実態を把握する目的の一環として、ウイルス課と環境水質課との共同で、昨年8月より河川水中に棲息する自由生活性アメーバの疫学的調査を行って来ました。その結果、50箇所の採水地点より採取した374サンプル中257サンプルより自由生活性アメーバを検出しました(検出率68.7%)。陽性サンプルから得られた自由生活性アメーバの内訳はネグレリア属509株、アカントアメーバ属152株、ヴァンネラ属44株、ハルトマンネラ属22株およびヴァルカンフィア属16株でした。得られたネグレリア属およびアカントアメーバ属の、種の同定と病原性を検討するために遺伝子型解析を行いましたが、現在までのところネグレリア属では病原性のネグレリア・フォーレリは見つかっていません。アカントアメーバ属については、角膜炎の原因となる遺伝子型に属する株が数種確認されています。分離株についての塩基配列解析は現在も継続中です。

(ウイルス課 木村 明生)

*自由生活性:他の生物に依存(共生や寄生)をしないで、独立して生活出来る性質。


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