大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第20号− 2005年04月27日発行


看護師の調製業務における抗悪性腫瘍剤暴露!

 ある病院で抗悪性腫瘍剤の調製業務にたずさわっている看護師の方から「自分たちは安全に抗悪性腫瘍剤を取り扱うことができているのでしょうか、また暴露を受けていないのでしょうか。」という相談を受けました。そこで、病棟での作業を観察し、看護師さんたちから業務の聞き取りをし、抗悪性腫瘍剤の環境調査および健康影響調査を行いました。その結果以下のことがわかりました。

(1) 抗悪性腫瘍剤の投薬は決まった時間に行わなくてはならないため、作業が短時間に集中します。そのため、調製、すなわちバイアル瓶に生理食塩水等を注射器で注入し、溶解、混濁後に点滴瓶に移し変える作業は本当にいそがしいようです。作業台には局所排気装置は設置されておらず、作業台の続きに事務机が設置されていました。看護師の保護具はプラスチック手袋のみで、マスクはせず、半袖のまま作業を行っていました。

(2) 病棟で使用されている抗悪性腫瘍剤19種類のうち8薬剤(42%)が発がんの可能性がある変異原性を示しました。また調査時の総取扱い抗悪性腫瘍剤のうち57%が変異原性をもつ薬剤でした。

(3) 調製で使用している作業台を作業終了後にふきとり、その拭い液の変異原性を調べたところ、8日間中3日間の試料に変異原性が認められました。高値を示した日は取り扱いバイアル数が多く変異原性をもつ薬剤も多い日でした。

(4) 看護師が抗悪性腫瘍剤に暴露されているか調べるため、尿中変異原性を測定しました。また抗悪性腫瘍剤によるDNAへの影響を調べるため、コメットアッセイという手法を用いて白血球中のDNA損傷度を測定しました。その結果、尿中変異原性は確認されませんでしたが、抗悪性腫瘍剤を取扱う看護師のDNA損傷度は取扱っていない看護師に比べて高くなりました。DNA損傷度が高かったといってすぐに影響がでるというものではありませんが、抗悪性腫瘍剤が体内にとりこまれDNAに傷を与えたことが示唆されました。

 以上のことから、抗悪性腫瘍剤による作業台の汚染と作業者への暴露が疑われました。作業手順の徹底、作業台の改善、個人保護具(長袖、マスクなど)を装備するように指導しました。

 この報告は1つの病院の事例ですが、他の病院等でもこういう問題があるのではないかと危惧されます。

(生活衛生課 吉田仁、小坂)


▲ページの先頭へ