大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第24号− 2005年08月31日発行


石綿管(水道管)の修繕作業に伴う石綿曝露!

 クボタの神崎工場で石綿管(水道管)を製造していた労働者の中で73名が石綿関連疾患で死亡していたことが明らかとなり、石綿の強い発癌性が話題になっています。クボタの場合は、石綿管の製造部門で働いていた労働者ですが、石綿管を使用していた水道関係の労働者にも石綿曝露があったと考えられます。石綿管はセメントおよび珪砂に石綿を混ぜ水を加えて混合し、円筒状にして固めたものです。石綿を混ぜるのは強度を増すためであり、青石綿と白石綿が使用されました。石綿管が水道管として使用され始めたのは1932年ごろからですが、広く使われるようになったのは1950年代で、それ以降、生産量が急増し、1965年にピークに達します。しかし、交通量の増加や老朽化に伴い石綿管の折損事故が頻発するようになりました。このためより強度のある鋳鉄管やダクタイル鋳鉄管などに代えられていき、石綿管の生産は1985年を最後に中止されています。2003年時点で残存する石綿管の総延長は18,710 km(水道管の総延長の3.2%)であり、1980年(86,806km)に比較し約1/5に減少しています。

 石綿管を使用する労働者が石綿に曝露される機会は敷設作業時と修繕作業時です。私どもは、1991年に水道局職員の水道管修繕作業時の石綿曝露について調査を行いました。既に、学会などでも発表していますが、参考のため紹介します。

【修繕作業時の石綿曝露濃度】 石綿管の折損事故で漏水が発生すると、水道局の職員が駆けつけ修繕を行います(外部の業者に委託しているケースもある)。まず、穴を掘って石綿管を露出させ、割れている部分の前後で石綿管を切断します。次に、新しい石綿管を同じ長さに切断してジョイントで接続し穴を埋め戻します。石綿管の切断には、高速ディスクカッター(円盤状の砥石が高速で回転する)を用いますが、この時、石綿を含む粉塵が発生するため、防塵マスクを着用していなければ、職員は石綿を含む粉塵を吸入することになります。

このような修繕作業時にどの程度の石綿曝露があるかを調べるため、某水道局の敷地内に穴を掘り、模擬的に石綿管切断作業を再現し、石綿濃度を測定しました。職員の呼吸位置での石綿濃度は、乾燥した石綿管では60 f/ml*、湿潤な石綿管では48 f/mlであり、いずれも高濃度でした。また、穴の中で作業者から1m離れた位置では91および170 f/mlとさらに高い濃度でした。穴の中での石綿濃度の平均値は92 f/mlであり、切断作業時(約5分間)以外の時間帯は石綿曝露がないと仮定して8時間平均値を算出すると0.96 f/mlとなりました。この値は、日本産業衛生学会が示す白石綿以外の石綿(青石綿、茶石綿など)の評価値(過剰発癌生涯リスク**が1000人中1人の場合:0.03f/ml、10000人中1人の場合:0.003 f/ml)の30〜300倍のレベルです。

【石綿管切断作業の頻度】 協力の得られた119市町村の水道局の修繕部門の職員を対象に、石綿管の切断作業に関する質問紙調査を行いました。修繕部門に所属していたものの中で切断作業を行っていたものの割合は、1966〜75年が79%ともっとも多く、次いで、1976〜85年および1956〜65年がそれぞれ71%および72%でした。切断作業の頻度は1年間に1〜10日がもっとも多く、次いで11〜25日でした。これらの結果を基に、職員1人当たりの累積日数を算出すると235日となりました。この値を修繕部門での平均在籍期間14.2年で割って、石綿管切断作業の頻度を算出すると、1年間に17日となりました。

【切断作業に起因する肺癌および悪性中皮腫による生涯死亡リスク】 米国労働安全衛生局(OSHA)およびHughesのリスク推定モデルを用いて、水道局修繕部門の職員における、石綿管切断作業に起因する肺癌および悪性中皮腫による生涯死亡リスクを次の仮定に基づき推定しました。修繕部門での在籍期間は14.2年、石綿管切断作業のある日は1年間に17日、その日の石綿曝露濃度は0.96 f/ml、最初の石綿管切断作業は21歳の時とすると、OSHAモデルでは10000人中6.0人(肺癌3.0人、悪性中皮腫3.0人)、Hughesモデルでは10000人中4.3人(肺癌1.5人、悪性中皮腫2.8人)と推定されました。ただし、このようにして算出された値は大きな誤差を伴う推定値であることを銘記しておく必要があります。

【石綿管の切断作業を行った方は健康に注意を】 調査を行った1991年と比較し、石綿管の割合が減少した現在では、修繕作業の頻度はさらに減少していると考えられます。しかし、石綿曝露に起因する肺癌や悪性中皮腫の潜伏期間は10〜50年であり、もっとも頻繁に修繕作業が行われた1960年代、1970年代の曝露による影響が今後現れる可能性があります。石綿管の敷設や修繕を行った経験のある方は、特殊健康診断を受けることが望ましいでしょう。なお、総務省の発表によると、石綿管の敷設作業に従事した水道局職員が悪性胸膜中皮腫により死亡し、1991年に公務災害に認定されています。  

(生活衛生課 熊谷)

* f/ml 1ミリリッター中の繊維の数
**例えば、「過剰発癌生涯リスクが1000人中1人」とは、問題にしていること(この場合は石綿管の切断作業)が原因で1000人の中で1人が癌になるということです。


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