大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第26号− 2005年10月31日発行


3歳児の呼吸器症状と自動車による大気汚染との関連!

 近年、気管支ぜん息や花粉症などのアレルギー性呼吸器疾患が増加しており、これらの疾患の発症と大気汚染との関連が疑われています。大気汚染と呼吸器疾患の関係については、1950年代後半から1970年にかけて石油化学工業地帯で硫黄酸化物を主とした大気汚染が見られ、ぜん息や慢性気管支炎の発症が増大したことが知られていますが、1970年以降種々の行政施策などにより、工場からの排気ガス汚染は大きく改善され、今日では局地的な汚染はほとんどなくなり、それに伴って発症者も減少しました。

 近年では大気汚染の主な発生源は自動車となり、都市部およびその周辺地域で広範囲な汚染をひきおこしています。なかでもディーゼル車の窒素酸化物排出量はガソリン車の2〜30倍、粒子状物質は30〜100倍という報告があり、発生源の大きな割合を占めているため、対策が進められています。

大阪府では、昭和45年度より、成人を対象に呼吸器症状に対する大気汚染の影響について調査を始め、昭和61年度からは、3歳6ヵ月児を対象に府内のいくつかの市で、呼吸器症状と生活環境についての質問票によるモニタリング調査を実施しています。

 平成13年度〜平成15年度の調査は、大気汚染物質濃度の異なる2地区(A、B)で実施し、公衛研が解析を担当しました。A地区の二酸化窒素濃度は13ppb、B地区は23ppbで約1.8倍、浮遊粒子状物質はA地区26μg/m3、B地区は32μg/m3で約1.2倍でしたが、ぜん息の呼吸器症状である「ぜん鳴(発作)」有症率は地区間で差はみられませんでした。

 この調査では、自動車による大気汚染の影響を調べるため、これまでの質問項目に加えて、居住地の自動車による大気汚染の程度を客観的に示す指標として推定曝露量を用いました。推定曝露量は、住居から500m以内にあり12時間交通量が1000台以上のすべての道路について「交通量×1/道路からの距離×0.01」を算出し、合計した値としました。例えば、推定曝露量3は、対象となる道路が1本の場合、交通量が5,000台では17m、10,000台では33m、15,000台では50m、20,000台では67m、30,000台では100mの地点の曝露量となります。

 「ぜん鳴(発作)」有症率を推定曝露量の区分別にみると、男児では、推定曝露量0〜1では2.5%、1〜2では1.9%、2〜3では1.6%、3〜4では3.2%、4〜5では4.5%、5以上では4.6%と3以上で高くなる傾向がみられ、女児ではこのような傾向はみられませんでした。(図1)


(図1)

 ぜん息発症には、様々な生活環境、生活様式、食生活を含む生活行動の変化等が関与しているといわれており、今回の調査でも「両親のアレルギー疾患の既往あり」、「本人のアレルギー疾患の既往あり」、「ペットの飼育あり」、「兄弟の順番が第1子以外」で「ぜん鳴(発作)」有症率が高くなっていました。

 これらの要因が影響しないように解析すると「推定曝露量3以上」は、男児でのみ、「ぜん鳴(発作)」発症に対する関与がみられ、推定曝露量3以上の自動車由来の大気汚染物質は、特に男児において「ぜん鳴(発作)」の発症に関与する要因の一つである可能性が示されました。

 学童でも、幹線道路の50m以内の居住者でぜん息の発症率が高いという報告があり、今回の結果は、これと矛盾しないものでした。  

(生活衛生課 中島 孝江)


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