大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第32号− 2006年04月27日発行


農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究

 平成15年5月の食品衛生法の改正により、いよいよ平成18年5月29日から「農薬等のポジティブリスト制」がスタートします。この改正に伴い、対象となる農薬数は現行の制度の250種類から516種類(動物薬、飼料添加物も含めると799種類)に倍増し、検査機関では食品に残留する多くの農薬を測定する必要に迫られています。施行後はポジティブリストにない農薬が残留した場合やポジティブリストにあっても基準値を越えた場合は、原則として食品の販売などが禁止となります。そのため検査結果により、輸入食品の場合は国際問題に、国内でも裁判に発展する可能性があります。検査データの信頼性が厚生労働省や地方行政機関などの多方面から問われることになり、検査精度の確保は重要な課題です。そこで、農薬等のポジティブリスト化に伴う検査機関の検査精度の現状を把握するために平成17年度から、当所も含め9つの地方衛生研究所の参加協力を得て、外部精度管理調査を実施しています*。ここでは、第1年目の結果を報告します。

 外部精度管理は、添加されている農薬の種類および濃度を知らされていない同一試料を各機関が測定することにより行います。これによって自機関の測定値の正確度を知ることができます。

 精度管理に用いる試料は大量に確保しなければならないので、市販品のトマトジュースや野菜ジュースあるいは、レッドピーマンとジャガイモの業務用冷凍磨砕ミクロペースト状食材を用いました。農薬は、参加機関が検査している数多くの農薬の内23項目を選び、この中から3,4種類を添加しました。検査試料の調製方法の妥当性、均質性および安定性について検討を行い、それらが確認された適正な試料を参加機関に配布しました。実施方法は、各機関の農薬検査標準作業書に従って5回の検査を実施することとしました。

 結果は、添加した農薬の種類を全機関が正確に言い当てていました。農薬の濃度に関しては、全体的な平均値は良好な結果が得られましたが、品質管理などに用いられているXbar-R管理図による方法や各機関における検査精度の相対的な判定に有効なZスコアによる方法で評価したところ、適正域に入っていない機関がある一方で、すべてパーフェクトであったところが2機関ありました。この要因について探索的データ分析(ビジュアルデータマイニング:視覚化データ処理技術)の手法を用いて解析したところ、特に担当者の農薬検査の経験年数、抽出回数、最終検液量・検量線濃度などのガスクロマトグラフィーへの負荷の程度などが関与して精度に影響を及ぼしていたと考えられます。

 このように本研究が各機関の農薬検査標準作業書の偏りや測定値の傾向が捉えられたことが成果であり、各機関の検査水準の把握ならびに分析技術の確認・向上を知る上で有意義であると思われます。食品の安全性確保が高まっているなかで、残留農薬の検査は重要であり、その検査データの信頼性の向上に貢献していきたいと考えています。

(食品化学課 村田)

*:厚生労働科学研究費補助金研究、食品の安心・安全確保推進研究事業「検査機関の信頼性確保に関する研究」の分担研究「農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究」として行っている。


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