大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第33号− 2006年05月31日発行


酸化チタン光触媒の水処理への展開!

  検索サイトのgoogleで”酸化チタン*光触媒”で検索をかけると、約22万件もヒットします。この酸化チタン光触媒とはどのようなものでしょうか。酸化チタンは半導体の性質をもっており、外部から光(紫外光)を当てるとエネルギーバンド*間で電子の移動が生じ、その結果酸化チタン表面の吸着水と反応し、酸化力がきわめて強いヒドロキシラジカル*を生成します。酸化チタン自身は変化しませんが、この反応が光のエネルギーで起きるので、「光触媒」と言われています。酸化チタンはイルメナイト鉱やルチル鉱を原料とし、熱処理や加水分解条件をコントロールして結晶型の異なるルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンが製造されます。生産量の多いルチル型は光触媒活性は弱いのですが、白色顔料として塗料や化粧品材料、食品添加物などに使用されています。一方、活性の強いアナターゼ型は外壁やガードレールなどの汚れ防止、室内空気浄化や抗菌加工に、またミラーや内視鏡の曇り防止など広い用途に使用されてきています。

 当所では、酸化チタンの利用が最も遅れている水処理分野での適用を目的として、水中の有機物質の除去について検討を行ってきました。おもに粉体状のアナターゼ型酸化チタンを使用し、色素溶液や界面活性剤溶液を用いて分解におよぼす各種要因について実験を行い、これらの有機物質が脱色はもちろん部分的に二酸化炭素にまで分解されることを確認しています。その結果、水処理分野への酸化チタンの利用の可能性が認められました。

 ただ、アナターゼ型酸化チタン光触媒を利用するには波長が380nm以下の紫外光(ブラックライト)が必要です。そこで可視光でもこのような光触媒作用を示す可視光応答型の酸化チタン光触媒の開発が盛んに進められています。ルチル型は一般的に活性が低いとされていますが、酸化チタンよりさらに小さいナノスケールの白金を表面に担持させることにより、活性が高まっていることが指摘されています。また、ルチル型は波長が410nm以下の光で触媒能を示すため、青色可視光を利用できる優位性を持っています。

 今回、アナターゼ型に加えこの白金担持ルチル型酸化チタンを用いて、水中有機物質の分解性について比較検討を行いました。光触媒能の評価によく使用されるメチレンブルー溶液を用いて検討した結果、光源として蛍光灯を用い同一条件で実験を行った場合、脱色率ならびにCOD(化学的酸素要求量)の減少率はアナターゼ型の31%及び8%に対し、白金担持ルチル型は76%及び30%であり、高い分解力を示すことを明らかにしました。今後、より活性の高い可視光応答型光触媒が開発されれば、自然光や室内光でこれらの効果が期待でき、身の回りの環境改善につながるものと期待されます。

(環境水質課 中野)

チタン*:

 チタンは地球の地核に存在する9番目に多い元素で、金属チタンは眼鏡のフレームやゴルフのクラブ、飛行機の外板などに、酸化チタンは顔料や光触媒に用いられる。


ヒドロキシラジカル*:

 OH・で表され、活性酸素と呼ばれるもののなかでは最も反応性が高く、塩素やオゾンよりも酸化力が強い。


エネルギーバンド*:

 原子のなかで電子で満たされている最もエネルギーの高いバンドを価電子帯、その上のバンドを伝導帯といい、酸化チタンでは紫外光を受けると価電子帯の電子が伝導帯に励起される。この時、価電子帯には電子の抜け殻である正孔が生じ、表面吸着水を酸化する。



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