大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第4号− 2003年12月26日発行


環境や人体に蓄積する難燃剤ポリ臭化ジフェニルエーテル

 難燃剤は、可燃性物質であるプラスティック、ゴム、木材、繊維等を燃えにくくするために用いられる物質で、火災予防や人命保護のためには必要不可欠なものです。ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)は、有機臭素系難燃剤の1種で、世界中で大量に使用されてきた主要な難燃剤です。PBDEs、特に4-6臭素化物を主成分とする製品(ペンタ-BDE)は、環境中で分解されにくく、生体への蓄積性が高いという問題点が明らかになってきました。また、急性毒性は低いのですが、一部のPBDEsは血中の甲状腺ホルモン濃度を低下させ、特に新生仔マウスへの投与では回復不能な脳神経機能の障害(学習障害・行動異常)を引き起こすと報告されています。

 近年、海外で野生生物や人体中のPBDEs濃度が急上昇していることが明らかにされ、我が国においてもPBDEs汚染実態の解明が急務となりました。当所では、1980年代から環境中のPBDEsのレベルを先行的に調査してきたところですが、食品化学課でも最近、近海産の魚介類およびヒト母乳中のPBDEs濃度を調査しその結果を発表しました。

 これまでの調査結果をまとめますと、近年の大阪府および我が国の平均的なPBDEs汚染状況は、スウェーデンと同程度であり、汚染の進行が著しい米国やカナダと比べると1-2桁低いレベルに留まっています。なお、府下の初産婦母乳中のPBDEs濃度は1990-2000年代にかけてほぼ横ばいの状態(乳脂肪1グラムあたり約1-2ナノグラム)で推移しており、直ちに乳児への健康影響が問題となるようなレベルではありませんでした。

 蓄積性の高いペンタ-BDEが現在も使用されている北米地域と異なり、我が国では1990年代初頭から産業界がペンタ-BDEの使用を自粛してきたために汚染の深刻化を免れたとも考えられます。しかし、PBDEsの環境内挙動や輸入食品・輸入難燃化製品を介した人体汚染の実態については未解明な点も多く、当所では今後も府内のPBDEs汚染状況を監視していく予定です。

(食品化学課 阿久津 和彦)


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