大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第41号− 2007年1月31日発行


日本人の血清中におけるフタル酸ジエステル類の代謝物量を測定

 [フタル酸ジエステル類について]

 塩化ビニル樹脂をはじめ、私達が日常的に使用している樹脂製品(建材、電線被覆、床材、包装フィルム、容器、医療器具など)中には、それぞれの用途に応じた柔らかさをもたせるための成分、すなわち可塑剤(かそざい)が配合されています。この可塑剤で多く使用されているものとしてフタル酸ジエステル類が挙げられます。フタル酸ジエステル類は、用途に応じて主要な8−9種類が流通しており、少しずつ化学構造が異なります。その中で最も使用されているものは、フタル酸ジエチルヘキシルです。フタル酸ジエステル類は、これらを含む樹脂から少しずつ溶け出したり揮発したりしますので、極めて微量ですが、私達はフタル酸ジエステル類を空気や食品等を介して取り込んでいると考えられます。体内に取り込んだフタル酸ジエステル類は、比較的速やかにフタル酸モノエステル類に分解されます。このフタル酸モノエステル類の血清中の濃度を測ることは、フタル酸ジエステル類に対する曝露量を推測するうえで役立ちます。フタル酸モノエステルの一部には、胎児期に曝露すると男性生殖能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、曝露量の評価が求められています。

 [研究結果]

 ボランティアの健康な若い日本人男性(20代、45名)から提供していただいた血清中のフタル酸モノエステル類をタンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ*で分析しました。その結果、全ての検体からフタル酸モノエチルヘキシル(フタル酸ジエチルヘキシルの分解物)およびフタル酸モノブチル(フタル酸ジブチルの分解物)を検出しました。また、およそ56%の検体からフタル酸モノエチル(フタル酸ジエチルの分解物)を検出しました。このことから、私達は、日常的にこれらフタル酸ジエステル類に曝露されていることが示唆されました。ただし、検出された量は、極めて低い値(最大で数 ng/mL**)であり、直ちに健康被害を懸念する必要がない結果でした。現在、このフタル酸モノエステル類の母子間の移行(母体から胎児)について研究を進めています。


(食品化学課 高取)

*タンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ(LC/MS/MS):

 液体クロマトグラフで分離した成分を質量分析計で分析対象物質の質量に応じて選択的に検出できる分析機器のひとつ。特長として質量分析計がタンデム(2連)になっており、これによって高い選択性を発揮し、試料中の妨害物質の影響を回避した高精度分析が可能となっています。



**1 ng/mL

(1 mL あたり10億分の1gの化学物質を含む濃度)



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