大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第42号− 2007年2月28日発行


鳥インフルエンザウイルスに対する迅速診断法の開発

 現在、鳥インフルエンザ(鳥の致死的な病気)が東南アジアを中心に持続的に発生しており、また、ヒトへの感染も認められています。この鳥インフルエンザウイルスが変異して、ヒトの体内、特にのどの中で増殖しやすくなり、ヒトの間で大流行するようになること、すなわち「新型インフルエンザ」の勃発が懸念されています。もしこれが発生した場合、特に初期に感染拡大を防ぐには、臨床現場において、新型と通常のインフルエンザあるいは他の急性発熱疾患とを迅速に鑑別し、抗インフルエンザ薬による治療や隔離対策など、患者のトリアージ(治療の優先順位)が必要です。現在、PCR(合成酵素連鎖反応)法ではヒトあるいは鳥ウイルスを区別することはできますが、特別な検査施設が必要であり、結果が出るまでに半日〜1日程度かかります。また、市販のインフルエンザ診断キットでは、鳥インフルエンザをヒトのインフルエンザと区別できません。私たちのグループは鳥インフルエンザウイルスだけを特異的に10分で検出できる方法を開発しました。

 鳥インフルエンザウイルスだけを検出するため、鳥インフルエンザウイルス内にある核蛋白質のみに結合する抗体を作製し、この抗体を用いてイミュノクロマト法という方法で診断キットを新たに開発しました。

 ウイルスに対する反応性について検討したところ、鳥インフルエンザウイルス(H3〜H15亜型)15株すべてに反応し、インドネシアやタイの高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)感染者から分離されたウイルス11株にもすべて反応しました。一方、ヒトインフルエンザウイルス19株、ヒトの呼吸器に感染するウイルス22株と細菌群24株とは反応しないことを確認しました。

検出感度は、タイあるいはインドネシアで分離されたH5N1株を用いた場合、市販のインフルエンザ診断キットと同程度でした。鳥インフルエンザウイルスが新型インフルエンザウイルスに進化しても、核蛋白質は非常に変異しにくい蛋白質のため、検出できなくなることはないと考えられます。

 現在、鳥インフルエンザウイルスによるヒト感染患者における鼻咽腔や咽頭でのウイルス量は必ずしも高くないと報告されています。しかし、一旦ヒト間での感染性が亢進した新型ウイルスが出現すると、同部位では通常のヒトインフルエンザウイルスと同程度に増殖すると考えられます。私たちが開発した迅速診断キットは迅速性、検出感度、特異性、抗原に対する安定性ともに十分に臨床応用可能と期待できます。

 この診断法が威力を発揮すると考えられる局面は、新型が他国で発生したとき、空港、港湾で検疫時に使用し迅速に感染防止対策がとれることです。また、国内に侵入して初期段階の時、迅速に患者を隔離、治療し、少しでも2次、3次感染を防止して拡大を遅延させ、新型ウイルスに対するワクチンが使用可能となるまで、最少の被害で持ちこたえるための一手段として威力を発揮することが期待できます。このキットは大阪府の新型インフルエンザ対策の一環として試験研究的に関係医療機関に配備する予定です。

(感染症部 高橋)



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