大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第44号− 2007年4月27日発行


市中型MRSAによる死亡例について

2007年4月初め、関東地方の1歳男児が「市中型」MRSA(注1)の感染により死亡した(発生は2006年)との報道がありました。

 市中型MRSAとは何か?

 一般にMRSAというと病院内で発生し、手術後など抵抗力の弱い患者が感染する「院内感染型」が知られています。一方、医療機関などとまったく関わりのない人からMRSAが分離されることがあり、いわゆる「まちなか」での感染であることからこれらの菌株を「市中型」MRSAと呼んでいます。この市中型MRSAが見つかるようになったのは1980年代以降で、米国で1997〜1999年に4名の小児が死亡したことから特に注目されるようになりました。その後の研究で、「市中型」と「院内感染型」は遺伝的に異なっていること、市中型の中に「PVL(注2)」という白血球を破壊する毒素を持っている強毒株が存在することなどが明らかとなりました。現在、PVLを持つ市中型MRSAは、欧米を中心とした世界各国で分離されています。日本では、PVLを持たないタイプの報告が多く、PVLを持つタイプは非常にまれで、今回のように死亡したケースは初めてです。


 症状と治療法について

 主に、皮膚と軟部組織でおできや膿瘍などの疾患を起こします。まれに肺炎をおこして重症化することがありますが、皮膚疾患等との関連はまだ明らかではありません。治療は、感染部位の切開による膿の除去、および抗生物質の投与によって行います。


 どのようにして感染するのか?

 主に接触によって感染が広がると考えられており、欧米ではレスリングなどのスポーツクラブ、軍隊や刑務所といった集団生活、学校などでの感染が報告されています。しかし、感染経路が判明しないことも多く、まだよくわかっていないのが実情です。


 何に気をつけるべきか?

 日本では、今回のような強毒株はまだほとんど存在していないと考えられるため、過剰に心配する必要はありません。しかし、今後拡大していくことも考えられ、また、すでに広がっていると言われるPVLを持たないタイプのMRSAに感染しないためにも、以下の点に注意しましょう。
・手洗いを徹底しましょう。
・スポーツクラブなどで使ったタオルを貸し借りするのは避けましょう。
・とびひやおできなどからMRSAが検出されることがあります。治りにくいなど気になる点があれば、病院に行って治療してもらいましょう。また、処方された抗生物質は、用法通りきちんと使いましょう。中途半端な量を使う、あまった薬を後で勝手に使うなどの行為はMRSAをはびこらせるもととなります。


 公衆衛生研究所でできること

 当研究所では、一般的な細菌学的検査に加え、薬剤耐性遺伝子やPVLを含む各種毒素遺伝子の検出、PFGEなどの分子疫学的解析が実施可能です。


(細菌課 河原)

*注1:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
*注2:Panton-Valentine ロイコシジン



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