大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第44号− 2007年4月27日発行


農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究(第2回)

 昨年度から施行された農薬等のポジティブリスト制により、基準が設定された農薬が増加され、検査機関では多くの農薬検査項目について正確な検査が要求されています。その一環として検査機関の検査精度や検査成績の信頼性確保することは必要不可欠となります。精度管理を実施することは、検査精度の確認ならびに検査結果の信頼性確保に重要な役割を果たし、食品の安心・安全に大きく寄与するものと考えます。そこで、地方衛生研究所の9参加機関(新潟県、愛知県、神戸市、奈良県、和歌山市、広島市、徳島県、北九州市、大阪府)の協力を得て、食品中農薬のGC/MS及びLC/MS/MSによる精度管理(外部精度管理及び内部精度管理)を実施してきました(注)。また、検査精度を維持・向上するための主な要因(標準品、分析法、分析装置)を検討して実施した2年目の結果を報告します。

 外部精度管理(各機関が添加されている農薬の種類及び濃度のわからない同一試料を測定することにより、自機関の測定値の正確度を知ることができる)に用いる試料は、農薬の場合、残留している試料を大量に入手することは困難であるため、業務用の冷凍磨砕ミクロペースト状食材に農薬を添加して作製しました。添加農薬の均質性、安定性を統計的に確認したカボチャ、ニンジン、ホウレンソウの精度管理試料に、30項目の添加農薬リストから各食品に4種類含まれているという方法により行い、各機関の分析法(農薬検査標準作業書SOP)に従って5回の検査を実施しました。一律基準値(0.01ppm)付近の低濃度の添加農薬を含めた延べ12種類の農薬検査の結果は、全機関が添加農薬の種類をすべて正しく検出しました。GC/MSによる各農薬の全機関平均濃度は添加濃度の82%〜105%、LC/MS/MSでは84%〜110%と良好な結果が得られました。

 Xbar-R管理図、Zスコアによる一般的な評価で、一部の項目で適正域に入っていない機関も認められましたが、総合成績では前年度と比較してかなり良好な結果が得られました。すべての評価で「良好」が4機関ありました。4機関の中で2機関は2年連続「良好」でした。GC/MSとLC/MS/MSによる測定値の比較では、LC/MS/MSの測定値がGC/MSの測定値と同程度あるいはそれ以上の精度の高い結果が得られました。相対標準偏差(20%以下が目安)で外部精度管理の評価をしますと、添加濃度の違いによる変動は概して認められず、カボチャ、ニンジンは全機関10%以下、ホウレンソウは全機関15%以下でした。国際的によく引用される手法のHorwitzの各濃度と比較しても良好な結果を示しました。

 標準品は、ポジティブリスト制度に対応した市販の農薬混合液(140成分)の同一ロットを使用しましたが、このことが標準品による各機関の検査精度のばらつきによるファクターを少なくし、検査精度に大きく寄与したものと思われます。

 分析法(SOP)は、厚生労働省一斉分析法に準じた方法が5機関、独自法(愛知県法、兵庫県法、SFE法、QuEChERS改良法)が各1機関で実施されました。これらの分析法を検証するために内部精度評価(各機関が自ら濃度既知の農薬を添加してSOPに従って回収率を知る)を用いて行いました。実際には30項目の農薬についてカボチャ、ニンジン、ホウレンソウの3食品に0.1ppmになるように添加し、無添加のそれらの食品の分析を並行してGC/MSによる測定により回収率を求めました。各機関のSOPで得られた添加回収率、HorRat値(コーデックスで提案される分析法一般規準:2以下が目安)による評価で、回収率が70%〜120%、HorRat値が2以下の目標が達成されており、いずれの分析法(SOP)も適正であることが確認されました。検討した30農薬の添加回収率の結果は、厚生労働省による一斉分析法における添加回収のA評価(平均回収率の中央値が70%〜120%)と一致しました。濃度既知の内部精度評価と濃度未知の外部精度評価の関係は、どちらも概ね70%〜120%の範囲内に入っており、内部精度評価で得られた結果と外部精度評価の結果はほぼ一致していました。

 GC/MSシステム状態の良好であること(一定レベルであること)の客観的かつ簡便な評価を目的としたGC/MSシステム評価用農薬標準試料を各機関に配布し、精度管理試料測定前と測定後のピーク形状(クロマトグラム)とピーク強度(定量値)を各機関から提出してもらいました。その結果、GC/MS装置性能評価では、比較的食品マトリックスの影響が懸念される精度管理試料の注入後も、注入口あるいは分離カラム部位における評価用農薬が、全機関とも概ね問題なく検出され定量値・ピーク形状も良かったことから良好な状態のGC/MSによる測定が行われていたと推察されました。

 今回の精度管理(外部精度管理及び内部精度管理)の結果は良好であり、「正確な(一定の)標準品」を用いて、「適正な分析法」で実施して、「良好な状態の分析装置」で測定することによって信頼性のある検査データが得られることが示唆されました。

(食品化学課 村田)

(注) 厚生労働科学研究費補助金研究、食品の安心・安全確保推進研究事業「検査機関の信頼性確保に関する研究」の分担研究「農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究」として行っている。


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