大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第47号− 2007年7月31日発行


食品への放射線照射とその検知

 食品を保存する方法として放射線を照射する方法があります。放射線の持つエネルギーにより、直接またはラジカル反応などにより細菌類の遺伝子を損傷し、殺菌などの作用を示します。放射線というと原爆や原子力発電所を想像しがちですが、食品に照射する放射線(ガンマ線や電子線)は持っているエネルギーが弱いので、いわゆる放射能とは無縁です。食品に照射された放射線は、レントゲン撮影のX線と同じように食品を通過しますが、放射線そのものは食品には残りません。当然のことですが、照射された食品には放射能は生成しません。

 日本では現在ジャガイモの発芽抑制以外の目的には食品への放射線照射が禁止されていますが、諸外国では食品の殺菌や貯蔵目的に照射が行われています。国内の食品照射に関する新しい動きでは、昨年内閣府の原子力委員会が香辛料などの殺菌目的に放射線照射を検討すべきであると結論しています。

 香辛料は栽培中だけでなく、収穫後の天日干しなど乾燥作業中に細菌汚染されることがあると言われています。日本では主に加熱蒸気により殺菌していますが、加熱により香辛料の持つ香気成分が損失し、香辛料としての品質低下が起こります。加熱殺菌した香辛料と照射殺菌した香辛料の香りの違いは普通の方でも簡単に区別できます。諸外国で一番多く照射されている食品は香辛料で、殺菌効果を目的としています。

 最近厚生労働省は、香辛料に照射された放射線を検知する公定法(食安発第0706002号、熱ルミネッセンス法:TL法)を公表しました。TL法は、食品に付着している微量の鉱物質が、放射線照射により蓄積したエネルギーを加熱(70-400℃)により放出するとき発光する現象をもとにしています。試料を加熱しその発光量を測定しますが、食品から鉱物質を抽出して測定する方法、さらに再照射を行いその前後の発光量の比を求める方法があり、ヨーロッパの公定法にも採用されています。

 これまで照射検知の公定法がなく、検査機関だけでなく、輸入業者も香辛料照射の有無を確認することができませんでした。香辛料の多くは海外で生産され、主な輸出国では香辛料への照射が許可されています。過去には生産国で照射された香辛料などが誤って日本へ輸出された可能性もありましたが、今後は国内の基準に適しているかを確認できることになり、消費者が持つ食品に対する不安感解消に役立つと思われます。

(食品化学課 尾花)


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