大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第6号− 2004年02月27日発行


血中のフタル酸ジエチルヘキシルの量を測る

 [フタル酸ジエチルヘキシル (DEHP) について]私達の生活用品には、塩化ビニル樹脂(塩ビ樹脂)がその優れた性能から多用されています(例えば電線被覆、ホース、家具、建材、食品包装、医療器具など)。塩ビ樹脂には、用途に応じた柔らかさをもたせるための成分、可塑剤(かそざい)が配合されています。この可塑剤で最も使用されているものがフタル酸ジエチルヘキシル (DEHP) です。塩ビ樹脂に配合されている DEHP は、わずかずつですが、空気中に揮発し、また塩ビ樹脂と接した水や油に溶け出していきます。私達は、食品や水、空気、そして医療行為などを介して DEHP を体内に取り込んでいると考えられます。

 DEHP は、内分泌かく乱作用が疑われる化学物質のひとつです。したがって、どの程度体内に取り込んでいるかといことを正確に知ることは重要です。私達は、血液中の DEHP とその代謝物の測定方法の開発に成功しました。

[DEHP の測定にまつわる問題]樹脂製品が多用されている現在、実験に用いる新品の試薬にも DEHP が含まれていることが多くあります。さらに実験室にも樹脂製品や電線があるため、洗浄後にしばらく実験室に置いた実験器具からDEHP が検出されてしまいます。これをバックグラウンド値といい、この値を低く抑えないと試料中の DEHP の量を正確に求めることは難しくなります。

[バックグラウンド値を抑えるには実験を簡単に]バックグラウンド値は、主に試薬や実験器具に由来します。試薬や実験器具の使用を減らすことによって、バックグラウンド値の低減化が可能です。しかし、実験を簡単にするということは、分析するうえで邪魔になる成分(妨害成分)が多く残ってしまうことになり、このままでは正確な値を得られません。

[妨害に LC/MS/MS で対処]タンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ (LC/MS/MS) は、液体クロマトグラフで分離した成分を2つの質量分析計で測定する分析機器です(かわら版@iph No.5参照)。特長は、測定対象に対する「高い選択性」です。これを活用することによって、妨害成分が多く残る試料の中から DEHP と代謝物を選択的に検出し、バックグランド値を抑えた状態で正確に測定できることが分かりました。ガラスの注射器で健康な人から採血し、血液中の DEHP とその代謝物濃度を測定したところ、それぞれ 2 ng/ml 未満と 5 ng/ml 以下でした。

  日本人の血液中の濃度が、問題ないのかあるのか、その研究のスタートに立ったところです。

(食品化学課 高取、北川(陽)、堀)


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