大阪府立公衆衛生研究所メールマガジン かわら版@iph

 −第7号− 2004年03月31日発行


化学物質の内分泌かく乱作用のスクリーニング評価(甲状腺ホルモンに対する影響)

 近年、内分泌かく乱化学物質いわゆる環境ホルモンについて関心が高まっています。内分泌かく乱化学物質による問題とは、ある化学物質が本来のホルモンと似た働きをして生体をかく乱したり、生体のホルモン量を変化させたりすることによって生殖機能や神経系等に悪影響を及ぼしている可能性があるということです。それらの可能性が指摘されている化学物質には、いくつかの農薬、アルキルフェノール、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニール及びビスフェノールA等が挙げられています。我々の生活環境中には、多くの化学物質が存在するため、それらの内分泌かく乱作用を持つ可能性についてスクリーニングしなくてはなりません。そのスクリーニング方法の一つに酵母 Two-hybrid 法があります。

 これまで、エストロゲン(女性ホルモン)への影響評価に関する研究が盛んに行われてきましたが、アンドロゲン(男性ホルモン)や甲状腺ホルモンに対する影響についても内分泌かく乱作用の観点から安全性の評価が求められています。当所では、酵母 Two-hybrid 法を用いて化学物質の甲状腺ホルモンに対する影響を調べています。甲状腺ホルモンは、エネルギー代謝の調節、神経系の発育及び骨や骨格筋の発達等で非常に重要な役割を果たしています。これまでに、私たちが日常生活を通して比較的接する機会が多い約 130 種類の化学物質(添加物、可塑剤、高分子原料、難燃剤等)について評価を行った結果、o-tert-ブチルフェノール及び o-イソプロピルフェノールに甲状腺ホルモンに類似した作用が認められました。しかしながら、これら化学物質の作用は甲状腺ホルモン(3,5,3’-トリヨードチロニン)の約 1/1万から1/10万 と非常に弱い作用でした。また、これら化学物質は単独で使用されることはなく、プラスチック樹脂合成の際に不純物として存在する程度であり、私たちが日常生活において高濃度に暴露される可能性は極めて低いと考えられます。

 化学物質の生体影響を評価するうえで有用な基礎的情報を提供するために、甲状腺ホルモンだけでなく、各種ホルモン系(エストロゲン、アンドロゲン)に対する多面的な影響評価を今後も行う予定です。

(食品化学課 北川陽子、高取 聡、堀 伸二郎)


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