溶出試験による「くすり」の品質評価

すりの「ききめ」は、同じ有効成分が同じ量だけ含まれていれば、すべて同じだと思われています。しかし、同じ有効成分が同じ量だけ含まれている製品でもききめが違う可能性があります。何故なのでしょうか?

1.くすりのききめについて

 内服固形製剤(口から飲む固形のくすり)の大部分は服用された後、有効成分が胃や腸で吸収され血液中に移行します。これら一連の過程のなかで、有効成分が血液中に移行する速度(時間)と量が、くすりのききめの違いの要因の一つになることがわかっています。特に最近では、製剤学的な要因も速度や量に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。例えば、造粒法(錠剤になる前の顆粒を作る方法)の違いや錠剤をつくる時の強度(固さ)、有効成分以外にくすりの中に配合されている賦形剤やコーティング剤と呼ばれる薬効を持たない成分の種類や量の違いなども、速度や量に影響を及ぼします。くすりは体内、特に胃や腸の中で溶けてはじめて吸収されるため、これら製剤学的な要因の違いにより、同じ有効成分が同じ量だけ含まれている製品でも、有効成分が溶ける度合によりききめが違う可能性が生じてくるのです。
 このように、くすりのききめの違いを正しく評価するためには、有効成分が本当に(確認試験)、どれだけ(定量試験)含まれているかを調べるだけではなく、先に述べたような製剤学的な評価も大切であることがわかります。それではくすりのききめを正しく評価するにはどうすれば良いのでしょうか? もちろん一番良い方法は、実際に人に服用してもらって、そのききめをみることでしょう。しかし、毎回このような方法で市販後のくすりの評価を行うのは非現実的です。確認試験や定量試験と組み合わせることにより、くすりのききめを製品ごと、製造ロットごとにある程度正しく評価でき、しかも日常業務として簡単に行うことができる方法が今回紹介する溶出試験法なのです。

2.溶出試験とは

図1 溶出試験装置の一例
溶出試験とは、決められた時間内に溶け出す有効成分の量をin vitro(試験管内)で測定する方法です。溶出試験装置の一例を図1に示しました。試料を投入したベッセルと呼ばれる容器内でパドルと呼ばれる回転翼を回転させ、一定時間内に試験液中に溶け出す有効成分の量(濃度)を高速液体クロマトグラフ等で測定します。
 このような溶出試験は、欧米では以前から数多くのくすりの品質評価に用いられてきましたが、わが国では比較的最近まで限られた種類についてのみであり、もっと多くのくすりに対して適用されることが望まれています。

3.先発医薬品と後発医薬品について

 同じ有効成分が同じ量だけ含まれているくすりが、複数の製薬メーカーから同時に発売されています。例えば、胃潰瘍の治療などに使われるシメチジンという成分を一錠中200mg含んでいる錠剤は、29社もの製薬メーカーが販売しています。新薬(先発医薬品)の独占販売期間が過ぎた後、発売され、有効成分が同じであって、用量、投与経路、用法、効能および効果が同一のくすりを後発医薬品(後発品)といいます。優れた効能をもつくすりの場合、後から各製薬メーカーがゾロゾロ発売するため、俗称「ゾロ品」とも呼ばれています。
 先発医薬品の開発には、10〜15年の年月と100〜200億円の費用が必要だと言われています。しかし後発品の場合、開発費等が安くすむため、国が定めるくすりの価格(薬価基準)は先発医薬品と比べ安く設定されています。またわが国では、後発品は、品質が劣っているかのような誤ったイメージの影響等により、薬剤費ベースでわずか7〜8%しか使用されていません。これは欧米における使用状況(20〜40%)と比較してかなり低い数字です。

4.後発医薬品の再評価事業とは

 後発品の再評価事業が厚生省(現在の厚生労働省)により平成10年度から7年間の予定で始まっています。この事業の目的は、品質が著しく不適当な医薬品を排除し、一定の水準に品質を保つこととされています。この目的を遂行するための手段のひとつとして、溶出試験による評価が行われることになりました。
 事業の概要は、溶出試験の規格が設定されていない5,000品目以上の内服固形製剤を対象とし、出来る限り短期間に溶出規格を設定し、くすりの溶出性に関する品質を確保することにより、品質の向上を図ろうとするものです。大阪府では国から事業の一部を委託され、当研究所で検討を行っています。当所では最新の自動溶出試験装置を使用して試験を行っています。
 この事業により、市場に流通しているほとんどの内服固形剤に溶出規格が設定されることになり、後発品の品質のより一層の向上が図られるとともに、安価な後発品の使用が推進されることが予測されるため、30兆円とも言われる医療費の中で約2割を占める薬剤費の抑制が図られることが期待されています。 5.最後に  現在市場には多種多様なくすりが流通しています。当所では府内で販売されているくすりの品質、有効性および安全性を確保するため、健康福祉部薬務課と共同で市場に流通しているくすりの抜き取り検査を毎年行っています。もちろん溶出試験による品質評価にも積極的に取り組んでいます。

薬事指導部 梶村計志