環境中の放射能レベルを監視する

成11年9月に茨城県東海村のウラン加工施設JCOで起こった国内初の臨界事故や、平成12年4月に和歌山で発見された輸入金属スクラップ中の放射性物質など、環境における放射能問題が広く話題となっています。

1.放射能とは

 「放射能」とは、原子核からアルファ線、ベータ線、ガンマ線等の「放射線を発生する性質あるいはその強さを指し、放射能を有する物質を「放射性物質」と言います。放射性物質には、ウランやラドン等天然に存在するものや、コバルト60等人工的に作られたものが数多く存在します。放射性物質は、私たちの生活と健康を守るために、エネルギー、医療、工業、農業等数多くの分野で幅広く利用されています。しかし、その反面、放射線は人体に対し健康被害を引き起こします。放射線は、利益・不利益の両面を持ち合わせていますので「両刃の剣」に例えられています。従って、その利用にあたっては、生ずる不利益を最小限にしなければなりません。このため、放射性物質の取扱いは、我が国の放射線関係法令により厳しく規定されています。

2.近年の放射能事故例等

 厳しい管理にもかかわらず、放射能事故は世界各地で、また日本でも発生しています。表2に放射能問題や事故例をあげてみました。最悪事故は、1986年に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原子力発電所4号炉の爆発事故です。この事故により、31名の人命が失われ、大量の放射性物質が世界中に拡散、降下しました。冒頭に述べましたように、日本でもJCO臨界事故が発生しました。この事故により2名が死亡し、付近住民が一時避難を余儀なくされ、わが国では最悪の放射線事故となりました。
 また、近年、日本各地で放射性物質等の管理が適切でなかった事による問題が発生しています。たとえば、チタン鉱石問題、劣化ウラン含有弾問題、モナザイト鉱石問題、輸入金属スクラップへの放射性物質の混入等です。

表2 放射能問題・事故の歴史

3.環境放射能調査とその必要性

 原子力施設や様々な放射性物質から公衆への被ばくを極力少なくするために、平常時から施設周辺や一般環境中の放射能レベルを継続的に調査しておくこと、すなわち「環境放射能調査」が必要です。これは、私達が健康を維持するため、定期的に健康診断を行っているのと同様に、放射能調査は、「環境の健康診断」の「放射能」という一項目です。
 わが国における環境放射能調査は、米・ソの大気圏内核爆発実験を契機として、1957年から関係省庁により開始されました。府内の環境放射能調査は、当所が国の依託を受けて1960年より継続して実施しています。

4.環境放射能調査の内容

 環境放射能調査は、平常時調査と緊急時調査に大別されます。府内の平常時調査の内容を表3に示しました。また、緊急時調査の概要は平常時の調査に準じますが、事故の内容や規模により文部科学省の指示した項目について詳細かつ速やかに実施しています。

表3 放射能調査の概要(平常時)

 

5.環境放射能調査結果について

 結果の一部を図1に示しました。この図は、大阪府の住民の方々から提供を受けた日常食(1日分の食事)に含まれるセシウム137量の推移をまとめたものです。初期の1960年代においては、大気圏内核実験の影響を受け、高いレベルを示しています。その後は、大気圏内核実験が終息したのに伴い、レベルは急激に低下しています。1986年にはチェルノブイリ原子炉爆発事故の影響を受けて一時的にレベルが上昇しましたが、その後再び低下し、現在では非常に低いレベルで推移しています。

図1 日常食中のセシウム137量の経年変化

 また、平成元年度以降、府内で採取した水道原水から極微量(0.1mBq/L前後)のヨウ素131が、時折、検出されています。これは、医療施設での治療や検査に用いられたヨウ素131医薬品に由来するものと推定されます。このヨウ素131のレベルは、放射能事故が起きたときの飲食物の摂取制限値(飲料水で300Bq/L以上)と比較すると、30万分の1にすぎず、人体への健康影響は心配ありません。

6.終わりに

 府内の環境放射能レベルは、現在のところ特に問題となる点はありません。放射能調査の必要性から、当所では、測定技術の向上、データや知識の蓄積を計りながら、環境放射能の監視を継続していきます。

環境衛生課 渡辺 功