身近で使用する殺虫剤・防除剤
         - 使いすぎていませんか?-

緑から初夏になり、気持ちの良い風を窓いっぱいに受けると、虫たちもやってきます。マンションの上層階ではあまり見かけなくなったハエ、カ、ゴキブリやシロアリは一戸建て等の家屋では頭痛の種です。ダニはマンション、一戸建て等を問わず気になります。あなたはどうしますか? そう、そこで登場するのが家庭用殺虫剤です。

1.殺虫剤・防除剤成分は農薬成分と同じです

 家庭用殺虫剤や園芸用殺虫剤には、主にピレスロイド系化合物や、有機リン系化合物が使用され、多種類の商品が販売されています。ハエ、カ、ゴキブリ、ノミ、室内塵性ダニ等の衛生害虫を対象とした殺虫剤は、薬事法により、庭の花木や室内の観葉植物の害虫を対象とした園芸用殺虫剤は、農薬取締法により規制され、ムカデ、クロアリ、ハチ等の不快害虫、シロアリや衣料害虫用の防除剤は化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)等に加え、業界の自主基準に従って製造されています。
 これらの殺虫剤・防除剤は、人に対する安全性が充分確保された上で製品化されているのですが、農薬とおなじ成分であり、内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)と疑われるものや、動物実験で発ガン性が示されるものも有り、使い方を間違えれば人にも悪い影響を与えてしまいます。頭のすぐ近くで電気蚊取をつけて寝たために体調を崩した例もあります。最近、ごく微量の化学物質で健康被害を受ける化学物質過敏症を発症する人が増加し、家庭での殺虫剤等の使用にも注意が必要となっています。

2.ホコリでわかる殺虫剤等の室内残留

 住宅の空気中には多くの化学物質が存在します。近年、健康被害をおこす有害化学物質の室内汚染が問題になり、厚生労働省はシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会を開き、汚染物質の室内濃度指針値(平成14年5月現在、13種類の個別物質と総揮発性有機化合物量について)を示しています。防虫剤や殺虫剤では、有機塩素系防虫剤のパラジクロロベンゼン(240μg/m3)、有機リン系農薬のクロルピリホス(成人:1μg/m3、小児等:0.1μg/m3)とダイアジノン(0.29μg/m3)、カーバメート系農薬のフェノブカルブ(33μg/m3)が定められました。これらの指針値は室内空気中濃度ですので、空気を採取してから測定器にかけてその濃度を算出します。
 室内にどのような殺虫剤等がどのくらい残留しているのかを大まかに観察するには、室内のホコリが有力な手がかりになります。表1は、殺虫剤等を使用した家庭と使用していない家庭のホコリを分析して、その中の殺虫剤等の濃度の違いを示した例です。殺虫剤等を使用すれば、ホコリに吸着された殺虫剤等が、使用していない場合の数百倍からそれ以上の高濃度で室内に残留することを示しています。

3.シロアリ防除剤の居室内濃度

表1から、シロアリ防除剤(ペルメトリン、クロルピリホス)については、長期間にわたる室内汚染を起こす可能性が考えられます。そこで、室内空気中のシロアリ防除剤濃度と、シロアリ防除剤をよく吸着する精白米についての濃度調査を行いました。

 
表1 電気掃除機で集めた室内ホコリ中の殺虫剤濃度
パラジクロロベンゼン  
濃度
    たくさん使用している家庭A
2.07
    たくさん使用している家庭B
1.25
    ほとんど使わない家庭
0.02
ペルメトリン  
    燻煙剤処理後1ヶ月
71.6
    シロアリ防除処理後4年
18.8
    使用していない
<0.1
クロルピリホス  
    シロアリ防除再処理後2年
20.37
    シロアリ防除処理後1年(新築)
7.82
    使用していない
<0.01
スミチオン  
    クローゼット壁に注入散布
0.38
    使用していない
<0.01
  濃度の単位はμg/g(μg:1gの100万分の1)

図1に有機リン系農薬のクロルピリホスでシロアリ防除をしたときの室内残留状況の例として、空気中クロルピリホス濃度と流し台下に静置した精白米への吸着量とを示しました。この図からクロルピリホスは防除処理後6年(有効期間は5年)を経ても室内濃度の大きな低下はみられず、気温の高い夏には冬よりも多くのクロルピリホスが気化するため汚染レベルが高くなっている事が判ります。また、その空気中濃度は、小児に対する空気中指針値(0.1μg/m3)と同レベルの濃度が観察され、床面での生活が多い乳幼児には注意が必要です。

 

クロルピリホスによるシロアリ防除処理で居住者の健康被害が報告され、室内空気中指針値が設定された後、建築基準法が改正され(H14.7.5)、クロルピリホスの家屋への使用は禁止されました。シロアリ防除をする際は施工業者とよく相談し、薬剤を多量に散布しない新しい工法を用いたり、薬剤を使用するときには過剰散布をしないように気をつけましょう。

4.室内汚染化学物質による健康被害を防ぐ方法

 殺虫剤等の室内汚染による健康被害を防ぐには、

1.発生源をなくす(殺虫剤等を使いすぎない)。
2.換気により汚染物質の空気中濃度を下げる。
3.掃除により汚染物質の吸着したホコリを除く。
4.汚染物質を吸着する精白米等の貯蔵食品は空気との接触を減らす。

などの方策が挙げられます。また、栄養素をしっかり摂り、規則正しい生活をおくることにより、からだの抵抗力を高めることも、微量の汚染化学物質による体調不良を起こさないための予防措置となるでしょう。

食品化学課 吉田精作、堀伸二郎

 

「ピレスロイド」とは
除虫菊の花に含まれる殺虫成分であるピレトリン類と、これと化学構造のよく似たピレトリン類似の合成化合物を総称して、ピレスロイドという。現在、殺虫剤に使用されているピレスロイドの多くは合成ピレスロイドである。