川の中の生物で水質を調べる

の中には、魚や水生昆虫(トンボの幼虫など、生活史の一部だけでも水の中で生活する昆虫)やその他の動物、付着藻類やバクテリアなどいろいろな生物が生息しています。これらの生物の中には、きれいな水に棲むものや汚い水に棲むものなど、川の水質に影響を受けているものがあります。したがって、川の中に生息する生物の種類や数を調べることによって、その地点の水質を知ることができます。このような水質の判定法を「生物学的水質判定法」といいます。

1.生物学的水質判定法と理化学的水質判定法

 河川の水質を調べる方法には「生物学的水質判定法」と「理化学的水質判定法」があります。
 理化学的水質判定法とは、水を採取し窒素やリン、BOD(生物化学的酸素要求量)などの項目を直接分析し判定する方法です。この方法は、測定する項目について各々、数値として情報が得られるので、汚濁の原因や程度を推定するのに適した方法です。しかし、この方法では、水を採取した時点の水質しか判定できません。したがって、刻々と変化する河川の水質変化を長期間にわたって経年的に比較するのは、継続的な調査を必要とし困難です。また、分析を行った項目以外の情報を得ることはできません。
 これに比べて生物学的水質判定法では、川の中の生物が生息してきた期間の総合的な水質を判定することができるので、長期間にわたる水質の変遷をみるのに適しています。また、理化学的分析項目以外に生物に影響を与える物質が存在した場合、調査結果に反映されることもあり、分析項目以外の汚染物質の存在を把握できる可能性が考えられます。

2.底生動物を用いた生物学的水質判定法

 生物学的水質判定法には、肉眼では見ることのできない小さな藻類(珪藻など)を調べる方法もありますが、一般的に用いられるのは、水生昆虫など、目に見える底生動物を調べる方法です。
 この方法にも、採取法や判定法など何種類かありますが、当所ではベック−津田β法で採集を行い*1、ベック−津田β法による生物指数*2とパントル−バックの方法による汚濁指数*3を求め、その数値から水質を
 1) きれいな水(貧腐水性)
 2) 少し汚れた水(β中腐水性)
 3) 汚れた水(α中腐水性)
 4) たいへん汚れた水(強腐水性)
の4段階に分類しています。それぞれの水質における生物の例を写真(1)〜(4)に示しました。

(1)きれいな水(貧腐水性)の生物の例
(2)少し汚れた水(βー中腐水性)の生物の例
非常に種類数が多く、きれいな水にしか棲まないカワゲラの仲間(右上の円の中のもの)やサワガニなどが見られる。また、カゲロウ(下の2つの円)の種類も豊富。 少し汚れた水の指標種である、ある種のトンボの幼虫(左円の中の数種)や汚れた水の指標種のミズムシなどもいる。
3)汚れた水(αー中腐水性)の生物の例
(4)たいへん汚れた水(強腐水性)の生物の例
汚れた水の指標種であるミズムシ(左下)やヒルの仲間(上の4匹)などがおり、また、種類数も少ない。 たいへん汚れた水の指標種である赤いユスリカやミミズの仲間しかいない。

 

3.生物学的水質判定法からみた水道水源河川の水質変遷

 当所では、水道水の水源となっている河川(水道水源河川)を対象として、1970年代から底生生物を調べ河川の水質評価を行っています。
 その結果、1970年代初めの水道水源河川の水質は、上流域はきれいで下流域が非常に汚れていましたが、近年は当時と比較して、上流域で汚染が進み、下流域で水質が回復する傾向が見られます。また、水道の水源となっている地点(水道取水点)の水質は、表1に示したように1981年までは「貧腐水性」と「β中腐水性」が多かったのですが、最近では、ほとんどが「β中腐水性」か「α中腐水性」になっており、「貧腐水性」を水道原水とすることが難しくなってきています。

表1 水道取水点の水質変化

このような水道水源河川の上流域における水質汚濁の進行は、人口統計や理化学的分析等の成績から、生活排水の流入量の増加が主な原因と考えられています。

4.おわりに

 川の汚濁原因を特定するにあたっては、生息する生物を調査するだけでは困難であり、理化学的分析は不可欠です。しかし、近年、汚染の原因物質が多様化しており、生物学的水質判定法と理化学分析法を併用することにより、水道水源河川の水質を総合的に調査できるものと考えられ、水道水源保全のため、今後とも調査を継続していくことが必要です。

環境衛生課 肥塚 利江

*1 生物採取法:ベック-津田(Beck-Tsuda)β法
設定地点の瀬で標準面積を限らず、4人で30分間採取するなど、人数と時間を決め、できるだけ広範囲から採取する方法。
*2 ベック-津田(Beck-Tsuda)β法による生物指数
採取した底生動物を耐汚濁性種(汚れたところにすめる種類)と非耐汚濁性種(汚れたところにすめない種類)に分け、その種類数を数えて、(耐汚濁性種の種数)+(非耐汚濁性種の種数)×2で求めます。この指数は、種類数即ち多様性を指数化したもので、数値が高いほどきれいな水であるといえます。
*3 パントル-バック(Puntle u. Buck)の方法による汚濁指数
採取した底生動物をきれいな水の指標種、少し汚れた水の指標種、汚れた水の指標種、たいへん汚れた水の指標種にわけ、それぞれに1,2,3,4の数値を与え、それぞれの指標種に与えられた数値とその頻度から計算します。この指数は1から4までの値になり、数値が大きいほど、汚れた水であるといえます。