消 毒 剤 

-手洗いの科学-

毒剤は主として手指、皮膚等に用いられる生体消毒剤(Antiseptics)と器具、環境に使用される消毒剤(Disinfectants)に区別されますが、今回は食中毒との関連から生体消毒剤を中心に述べます。

 手指の消毒剤(創傷部位の消毒用を除く)として一般的に入手可能な製剤はクレゾール石鹸液等に限られますが、医療現場等では消毒用エタノ−ル、ヨウ素系のポビドンヨ−ド、陽イオン界面活性剤系の塩化ベンザルコニウム、ビグアナイド系のグルコン酸クロルヘキシジン及び両性界面活性剤系の塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の様々な製剤が使用されています。消毒剤は液状タイプが主流ですが、最近はゲル状、フォーム状の製品や使用後の水洗が不要な擦式の製品も登場しています。

 用途に応じて薬剤を選択すること、製品ごとの用法用量を守ることは言うまでもありませんが、基本的な手洗いの方法が不適切なため、期待する消毒剤の効果が得られないケースも多くみられます。

 昨年のO-157流行時に、堺市で塩化ベンザルコニウム液が各家庭に配布されましたが、これは法定伝染病菌及び食中毒原因菌等を常用濃度(塩化ベンザルコニウム濃度0.05〜0.2%)で殺菌します。塩化ベンザルコニウム液で手指・皮膚の消毒をする場合、消毒前に石鹸で洗浄した後0.05〜0.1%の薬液に浸して洗浄しますが、石鹸によって薬液中の薬効成分が沈殿し効力が低下するため、石鹸分は十分水で洗い落としておくことが大切です。また、無意識に手指を洗うとき図に示したような部分に手洗いミスが発生しやすいので、その部分を意識的に洗浄すること、少なくとも30秒間は手洗い時間を取ることが必要です。一方、家具物品等の消毒には0.05〜0.2%溶液を布片に含ませて清拭塗布又は噴霧して使用し、感染者の使用した衣類などは薬液に浸して消毒しますが、リネン、タオル等に薬効成分が吸着されやすいこと、汚物等に含まれるタンパク成分は薬効成分により変性して凝固するといった点に注意を要します。

 細菌類は全て病気の原因と考えられがちですが、健康な人の皮膚にも細菌類は存在し、皮膚を健康に保つ働きをしています。すなわち、人体にとってよい菌と悪い菌のバランスが崩れることにより感染症は発症することが多いため、消毒剤の適正使用により食中毒や感染症の原因菌を消毒し、疾病を予防することが必要です。当研究所ではこれらの点をふまえた消毒剤に関する総合的な研究を実施しています。

薬事指導部 坂上 吉一