クリプトスポリジウムと水道水

リプトスポリジウム(Cryptosporidium)は寄生性の原生動物(原虫)です。数種が知られていますが、その中でクリプトスポリジウム パルバム(Cryptosporidium parvum:以下、C.parvum)という種類は、ヒトを含む多くの哺乳動物(ウシ等の家畜やイヌ・ネコ・ネズミ等)の小腸に寄生し、ヒトでは、激しい水様下痢を引き起こすことが知られています。

 この下痢症は、健常者では、発症しても2週間ほどで自己免疫力により治癒しますが、免疫力の低下した人(HIV感染者、免疫抑制療法を受けている人、老齢者など)では、死に至ることもあります。

 感染したヒトまたは動物の糞便には、C. parvumのオーシスト(oocyst:接合子嚢、大きさ約5ミクロン)が多量に含まれ、環境中ではこの形で存在し、これが経口的に摂取されて感染します。このオーシストは環境中で増殖することはなく、乾燥や熱には弱いのですが、塩素などの消毒剤に強い耐性を持っていることから、これが水道水に紛れ込んだ場合、感染性を持ったまま一般家庭へ供給されてしまう可能性があります。現に、欧米ではこの種の集団感染事故がここ十数年何度か起こっており、日本でも昨年6月に埼玉県越生町(おごせまち)で8,000人以上が感染する事故が起きています。これらの事故の多くは、水道原水が畜産排水や下水からのオーシストで高濃度に汚染され、しかも浄水処理が不十分であったことが原因として推定されています。越生の事件では、いろいろな条件が重なって大規模な集団感染になったようですが、最初の汚染がどこからきたのか明らかにはなっていません。家畜や感染した動物の排泄物による汚染、海外渡航者の感染等が考えられますが、いずれにせよ、この事件で、日本の水道原水もオーシストで汚染される可能性があるということが明らかになりました。

 アメリカやカナダでは、水道原水の約87%がクリプトスポリジウムのオーシストで汚染されていたとの報告もあります。また、最近になって、関東地方の水道原水でオーシストが検出されたとの報道があり、日本の現状がどうなのか調査する必要があると思われます。

 当研究所では、大阪府下の市町村の水道原水と浄水の検査を行い、水道水源の状況と浄水機能について調査しています。

環境衛生課 肥塚 利江