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ウエストナイル熱(脳炎)

1999年の夏の終わり、アメリカのニューヨークでは脳炎症状の患者が続けて発生し(患者数62名)、人以外にも馬や野鳥、動物園の鳥たちが次々と死亡していきました。原因究明が進められる中、夕涼みで戸外にいたことが患者の共通要因として浮かび上がり、蚊が媒介するセントルイス脳炎が疑われました。しかし、その後の詳しい調査で、それまで分布しないとされていたウエストナイル熱(脳炎)であることが明らかになりました。
 この感染症の病原体であるウエストナイルウイルスは、1937年ウガンダのウエストナイル地方で最初に分離されました(名前の由来はその地域名から来ています)。従来、アフリカ、中東、ヨーロッパ、西アジアで散発的に発生していた感染症なのですが、なぜニューヨークで突然発生したのかは謎のままです。それ以降、流行地域も東海岸地域から南部、そして西部へと拡大し、現在ではアラスカ、ハワイ、オレゴンを除いてほぼ米国全土に拡がり、2003年の患者数は9,862名(死者264名)に達しています。また、近隣のカナダやメキシコにも流行地域は拡がっています。

1.ウエストナイル熱(脳炎)の病原体、症状

ウエストナイルウイルスは、フラビウイルス科に属し、我が国に存在する日本脳炎ウイルスと非常に近い仲間です。感染はウエストナイルウイルスを持った蚊に刺されることによって起こりますが、特殊な例として輸血や臓器移植、母乳による感染も報告されています。
 感染した人のうち、多くの場合は症状が出ないまま治ると考えられていますが、およそ2割の人は発症し、2〜14日の潜伏期の後、高熱、頭痛、関節痛、消化器症状、筋力低下、発疹などの症状が出ます。また、発症者の一部は、より重篤になることがあり、脳炎症状を呈して死亡することもあります。特に高齢者では注意が必要です。また、アメリカで流行しているウエストナイルウイルスは、これまでのものよりやや神経病原性が強いと言われています。

2.媒介蚊とウイルス保有動物

アカイエカなどイエカ属の蚊が、このウイルスを運ぶ主要な役目を果たしていると考えられていますが、その他多くの種類の蚊がウエストナイルウイルスを持つことがわかっています。いずれにしても私たちの周りをごく普通に飛んでいる蚊の多くがこのウイルスを媒介する能力を持っています。
 ウエストナイルウイルスを持った蚊が鳥を吸血して鳥に感染し、その鳥の中で増えたウイルスをまた別な蚊が吸血するといったように、自然環境中では主に蚊と鳥との間で感染を繰り返しています。このウイルスは非常に多種類の鳥類に感染することがわかっており、カラスやスズメなど私たちに身近な鳥類も感染します。アメリカでは感染して死亡したカラスの調査が、その地域での流行をとらえるための指標として利用されています。

3.ウエストナイル熱(脳炎)の侵入に備えて

図1
図1 平成15年8月〜10月に府内17個所の調査定点で捕集されたかの数と種類

アメリカでのウエストナイル熱(脳炎)の流行は、私たちにとって決して対岸の火事ではありません。多くの人や物が海外を行き来している現在、ウエストナイルウイルスに感染した蚊や動物(馬・家禽などの経済動物やペットとしての鳥類、ほ乳類)が航空機や船舶によって運ばれてくることが十分に考えられます。
 当研究所では、昨年からウエストナイルウイルスの侵入を監視する目的で、大阪府の健康づくり感染症課、環境衛生課、各保健所と協力して、蚊の捕集調査(図1)や死亡したカラスの調査を行っています。現在までのところ、ウエストナイルウイルスは検出されていませんが、侵入に備え、蚊や鳥類のサーベイランス(流行監視)を継続していきます。

参考 大阪府で捕集される主要な蚊の簡易同定表
参考表
感染症部ウイルス課 弓指 孝博、瀧 幾子
ロゴマーク 公衛研ニュース第25号(2) 編集:公衛研ニュース編修委員会