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ペット由来感染症

最近、ペットを飼う人が増加し、ペットからヒトに感染する病気(ペット由来感染症)が増えて問題になっています。ここでは、主なペット由来感染症とはどのようなものか、その現状、予防、代表的な病気の例について述べたいと思います。感染症の種類のうち動物から感染するものは意外にも約60%もあります。日本では、動物からヒトに感染する病気が約50種類ほどあり、その内ペットからのものが約30種類あります。主なものとして、ネコから感染する病気が8種類(ネコひっかき病、トキソプラズマ症、Q熱など)、イヌから9種類(イヌ蛔虫症、レプトスピラ症、ブルセラ症など)、トリ類から3種類(オウム病、クリプトコッカス症、サルモネラ腸炎)があり、多くの種類のペットが感染源になります。
 また、今まで飼育されてきたことがない新規のペット(エキゾチックアニマルと呼ばれる野生動物)はどのような感染症を持っているのか未知のことが多く、ペットとしてお勧めできません。原因となる病原体には何cmもある寄生虫から原虫、真菌、細菌、リケッチア、クラミジア、さらに非常に小さいウイルスまで様々です。発生頻度の高い病気について、その感染源動物、感染経路、症状等を表1にあげました。

1.代表的なペット由来感染症

(1) ネコひっかき病

バルトネラ菌という細菌によっておこる病気です。ネコ、特に子ネコ(原因の70%は子ネコ)の爪や口腔内、血液、皮膚にこの細菌が存在し、人をひっかいたり咬んだりして感染しますが、傷のない場合も40%ほど見られます。また、ネコに寄生するネコノミの腸管で増殖し、糞の中に出るので、人がノミに咬まれても感染します。ネコノミが繁殖する夏から秋にかけよく発症します。ネコの保菌率は約7%で、暖かい地方は保菌率が高いようです。
 症状は、ひっかかれてから1週間前後で虫さされのような丘疹ができ、2〜3週でリンパ節の腫れと痛み、発熱、悪寒、倦怠感などの風邪様症状が出現します。傷がない場合は風邪と誤診されることが多く、注意が必要です。症状は数週から数ヶ月続き、通常は自然治癒します。5〜10%の人は重症型になり、脳炎や眼の奥の炎症が起こり、迅速な抗生物質による治療が必要です。予防法はネコと接触した後の手の洗浄、ひっかき傷の消毒、ネコノミの駆除です。

(2)オウム病

オウム病クラミジアという病原体が原因です。インコ類(原因の70%)やトリの糞に存在し、乾燥した糞を吸入したり、唾液中にいるクラミジアがえさの口移しによりヒトに感染します。輸入されたトリの50%、ハトの20%は保菌しています。40歳以上の大人がよく発症します。症状は1〜2週間の潜伏期の後、突然高熱で発症し、頭痛、倦怠感、筋肉痛などインフルエンザ様症状が特徴です。急性肺炎から肺炎の見られない軽症型まで様々です。抗生物質が有効ですので早期の診断が重要です。予防は乾燥糞をすわないようマスクをすることやえさの口移しをしないことです。

(3) トキソプラズマ症

トキソプラズマ原虫という原虫が原因です。この原虫は多くの哺乳動物、鳥類、家畜(ブタ、ヒツジ、ニワトリ)が宿主となり、ペットではネコが感染源となります。感染している子ネコの糞便中に原虫が排泄され、数日経つとオーシストと呼ばれる感染性のある型に変化します。これをほこりなどとともに経口的に摂取することで感染します。不顕性感染が多く、成人の5〜40%のヒトが感染しているとの報告があります。
 症状はリンパ節炎で発症する場合があります。妊婦が妊娠初期に感染すると流産する場合があり、中後期に感染すると胎児に感染し、眼疾患や精神運動障害を起こします。この先天性トキソプラズマ症の頻度は1/(2000人出生)と推定されており、原虫を排出するネコの頻度は1%です。予防は感染ネコの糞の迅速な処理、焼却です。

2.ペット由来感染症の予防

ペット由来感染症が最近増加した原因として、 などがあげられます。予防は個々の病気について、どのようにして感染するのかよく理解して感染しないようにするのが第一です。そのために日常生活上注意することは、 などがあげられます。皆さんが正しい知識を持って、ペットと一緒に健康で豊かな生活を送って頂く助けとなれば幸いです。
表1 ペット由来感染症
図1
感染症部ウイルス課 高橋 和郎
ロゴマーク 公衛研ニュース第27号(1) 編集:公衛研ニュース編集委員会