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ノロウイルス検出用イムノクロマトグラフィー

ノロウイルスは、カリシウイルス科に属する胃腸炎起因性のウイルスです。感染性が強く、乳幼児からお年寄りまで幅広い年齢層に感染するのが特徴です。この数年間、食中毒事例の患者数では一番多く、また集団感染症としても、最近注目を浴びているウイルスです。
 ノロウイルスは、大きく分けるとGenogroup I(GI)とGenogroup II(GII)に分かれます。今後さらに種類が増えることと予想されますが、現時点では、GIは、さらに14のgenotypeに、またGIIは、17のgenotypeに分けられています。
 ノロウイルスの検出には、時間と手間がかかっているのが現状です。これは、このウイルスは種類が多くて、良い市販の簡単な検出系がないためです。

1.ノロウイルスの検査法について

現在、もっともよく使われている検出系は、RT-PCR 法です。簡単な解説をしますと、ノロウイルスはRNAウイルスですので、逆転写酵素で目的のRNAからcDNAを合成し、それをもとに通常のPCRを行って、目的遺伝子を増幅するという手法です。ウイルスの種類が多いため、複数のプライマーセットを使っているのが現状です。検査に要する時間は、検体処理も含めると6〜8時間です。
 そこで、当研究所では、数年前から、特別な機器を必要とせず、どこでも簡便に使えるノロウイルスの簡易迅速キットを作製しようと試みてきました。

2.開発中のキットについて

図1
図1イムノクロマトグラフィーの反応

このキットはイムノクロマトグラフィー(IC)といい、ノロウイルスに対する2種類の抗体を使う免疫学的な手法を使っています。検査に要する時間は、検体処理も合わせて、20〜30分程度です。現在、市販されているノロウイルスに特異的な抗体を使っているELISAキットに要する検査時間が3〜4時間ですので、かなり迅速に判定できるものです。
 このキットで実際の検体を使った陽性と陰性を図1に示します。キットが問題なく機能していることを示すコントロールラインが表示される必要があり、これが、図1の(1)および(2)で表示されているCの下のラインです。このラインに加えて、陽性検体では、(1)で示してあるように、Tの下にもラインが表示されます。これで陽性と判断されるのです。

ICキットについて、すでに市販されているノロウイルス検出用のELISAキットと、検出率の比較をするためにRT-PCRで陽性となった患者便を使って実験をした結果を表1に示します。
 ノロウイルス検出用のELISAキットは、GIとGIIに分けて販売されているので、それぞれのGenogroupに分けて反応をみてみました。当所のICキットは、GIとGIIを区別していないため、両方のGenogroupについて同じキットを使用しました。

表1 ELISAキットとイムノクロマトグラフィーの
検出率の比較

表1

その結果、GIに関しては、ELISAキットが検出率75%であるのに対し、ICキットの検出率は50%とかなり低くなりました。ところが、GIIについては、ELISAキットが検出率26%と低いのに対して、ICキットの検出率は62%とかなり高くなりました。全国的にGIとGIIの検出率をくらべると、GIIが圧倒的に多いのが現状です。この現状を考慮すると、集団発生時のスクリーニングには、このICキットは、充分使えるのではないかと考えられます。
 今後、非特異反応を低くするために、ノロウイルスに感染していない健康者の便検体、及び他のウイルス性の胃腸炎にかかっている方の便検体をたくさん用いて調べていく必要があります。

* ICキットの開発は当所のノロウイルスグループと北海道衛生研究所、アドテック株式会社、JBSとの共同開発で行われました。

感染症部細菌課 依田 知子
ロゴマーク 公衛研ニュース第28号(2) 編集:公衛研ニュース編集委員会